■映画「トロイ」考察■>総括>人間ドラマ

■映画「トロイ」考察■

映画「トロイ」のカテゴリ別総括

総括トップ

…といっても全然総括にならないほどだらだらだらだら・・・・。がふ。
天下のIMDBでトロイを検索するとカテゴリ的にはこうです。〔検索結果
Genre: Action / Drama / War / Adventure / Romance

この場合三つに絞ってもいいかと思います。
■人間ドラマとして■Drama(人間ドラマ)
■戦争物として■War(戦争)Action(アクション)Adventure(冒険)
■恋愛ものとして■Romance(恋愛)

■人間ドラマとして■Drama(人間ドラマ)

この作品、私は最初に脚本にやられました。ストーリーの組み立て方、実に慎重に選ばれたセリフ、そして高いメッセージ性。
今まで私は俳優の演技とか美術の美しさや音楽の良さ、CGやアクションのセンス、そして勿論ストーリーが良いことを基準に、ジャッジを下してきたわけです。ところがこれはもう第一に脚本がすごいと思った。今まで「脚本をすごい」と感じたことはありません。

このレビューを公平に書きたいためにきちんとした「イリアス」は読んでいません(買ってはある)が、ギリシア神話サイトの粗筋とキャラクター紹介を読んで鳥肌が立つほどに感動しました。この物語をこんな風に解釈して脚本にするなんて!
キャラクターの立場はほとんど変わっていないのに、ブリセイスとパトロクロスをいとこに変えることで非常に美しくバランスを取っている。

アキレスとヘクトルの周囲の環境は戦争を軸に驚くほど良く似ている。
自分の意見を聞き入れない上司(アガメムノンとプリアモス)、先走る年下の血縁(パトロクロスとパリス)、愛する女性(ブリセイスとアンドロマケ)、自分に従う部下(ミュルミドンとトロイ軍)、戦う理由(栄光の為、国の為)。

最初のレビューではアキレスとヘクトルのことを正反対と書きましたが、彼らの生き方は同じ信念で支えられています。

それは「神様を頼らないこと」
アキレスはアポロ像の首を落とすから至極分かりやすいですが。
ヘクトルは「神々の庇護があるから」という言葉に必ず反論します。プリアモスに「アポロは軍隊を指揮してくれない」と言い、神官に「神はこの戦をしない」「鳥に戦術を決めさせるのか」と否定します。
二人とも神の存在は信じてはいるし、ヘクトルは敬ってもいるけれど神様をまったく当てにしてはいけないと思っている。

だから彼らは常に先陣にいる。

アキレスは『自分のため=永遠に残る名声』を求めて戦っています。
神に祈ったところでそれは手に入るものでは当然ありません。自分の手で掴んでこその栄光・名声。だから自分で戦うしかない。

ヘクトルは『祖国』のために戦っています。
戦いを好まず、できれば妻や息子と共にいる平安な生活を求めているのに常に最前線にいます。指揮官としての義務感やこの戦争は自分の血を分けた弟が引きこした事ですから責任を感じていることもあります。でも、ただただ軍隊の後ろで神に祈っていても運命は変わらない。だから自分で戦うしかない。

基本的な考えは一緒なのに、モチベーションが名声か祖国かで二人の生き方はまったく違うし、そのカリスマの質もまったく違う。

アキレスもヘクトルも部下に絶大な人気を誇っています。
アキレスは「自分もあんな風に勇猛に戦いたい!」といったスポーツ選手に対する憧れ的な人気。ヘクトルは「この人の為に戦いたい!この人の信念に付いていきたい」というある意味教祖的な人気。

だからアキレスがいると戦闘能力が高まり、ヘクトルがいると団結力が高まると言えばいいのでしょうか。オデッセウスが言うところの「戦う理由よりも力」というのがまさしくそれ。トロイの戦う理由がヘクトルの「トロイを守りたい」という信念で、ギリシアにはメネラウスも死んだことで「ヘレンを奪い返す」という戦う理由がなくなった以上、力のアキレスが必要なわけです。

アキレスは死を恐れないほどに名声を追い求め、ヘクトルは祖国を守る為、誰よりも真っ先に立ち上がる。
あの演説の対比は本当に名シーンです。何度見てもドキドキします。

戦い自体を美化しないところも同じ。
アキレスがアポロ神殿の前で冑を脱ぐ時、殺戮が楽しいのならばもっとランナーズハイのようになってもいいのに、まったくそうではない。人殺しをしているけれど、それそのものを楽しんでいる表情をしない。
ヘクトルに一騎打ちを挑むシーンの「目も鼻も舌もそいでやる」と言っているときは狂戦士の顔していますけど、ここはもう『名声』のための戦いではないから。(私はここで「わーやっぱりブラピだ」と一寸喜びましたが)
ヘクトルはパリスに「戦って死ぬ」と言われた時の怒りぶりが端的。
〔これは「戦争映画として」にて言及します。〕

同じ立場の対象と絡むシーンのセリフと演技が、異なっていたり、実は同じことを指していたりすることで互いの性格の違いを表現しています。
自分の意見に反対されてアガメムノンが嫌いだから進軍しないアキレスと、反対されても父王を敬愛しているから出陣するヘクトル、とか。部下に対してきちんと面と向かって語るシーンがある(アガメムノンはありませんね?)とか。

他のキャラクターも、とても対照的であったり同調的に書かれています。
その筆頭がプリアモスを軸にしたヘクトルとパリス。この事件に対しての兄弟の父親に対する最初の一言が兄は「(国政に)由々しき事態を招きまして」で、弟は「(戦いに出るなんて言って)心配かけてすいません」と言う点でパリスは国にまで目が向いてないということが分かる。

一言一言が、いかにもそのキャラクターらしく説得力がある。その一言を言うことがそのキャラクターの性格を示している。この戦争は彼らがこんな性格だからこうならざるを得なかった、と言う気がしてならない。
パリスがもっと国政を見ることが出来たならヘレンを略奪しなかっただろう。
アキレスが強情傲慢でなければ、ギリシア軍と共に進軍していただろう。
ヘクトルがもっと弟に冷徹であったら、メネラウスを殺すことも無かっただろう。
そう思うのです。

 
考察一覧