■映画「トロイ」考察■ストーリー考察6■

■映画「トロイ」考察■

映画「トロイ」ストーリー考察

二つの国の二組の兄弟

ここちょっと兵士多すぎな気がするんですが…。
このシーンで王子兄弟を見守る女性陣の描き方がとても対照的です。
1ショットづつ入るバストアップショットでヘレンは目が泳いでいるのにアンドロマケは定点…。戦術に対する一喜一憂が如実に出るヘレンに対して、アンドロマケは感情を押させている印象を受けます。うう…まさに王族の妻。なんて対照的。

対面したときのやりとりは、ヘクトル虚勢張ってるなという印象を受けました。客観的にみれば「歓待を受けておきながら、夜に人の妻を奪った」トロイの方が悪いのは分かっているはずですけどね…。なのにパリスと来たら「ヘレンは昼に去った」吹替えは「僕とへレンが去ったとき太陽は輝いていた」
ここで二通りの解釈。
単純に「夜じゃなくて昼です」と言いたかった。
「太陽が輝いている(アポロも認めている)時に去ったので自分たちに後ろ暗い点はない」
前者ですと、誰も夜昼のことなんて問題にしてないって!!ここ本気で言っているならかなりのおバカさんですよパリス。挑発するにしてももう一寸気の利いたことをいえないのか…。後者なら、どう考えても後ろ暗いでしょう貴方たち…。

交渉決裂の末互いの陣営に戻る直前、前夜の約束どおりメネラオスに戦いを挑むパリス。 アガメムノンに耳打ちするメネラオスの「あのガキを殺る」というセリフの『ピーコック』という単語が入っていることに気が付いたときは笑いました。 パリスは孔雀ですか!?一応美しいことは認めるのね…(笑)

対戦シーンのパリスの駄目っぷりはなかなかすごいものがありました。
すぐに脱げてしまうけど冑がこんなに似合わないとは、かぶってみるまで分かりませんでした。
ダウンしたときの「立て!早く!」とつぶやくヘクトルとプリアモスが心配というよりもふがいなさへの憤りの表情なのが一寸切ない…。
王族たるもの、情けない死に様をさらす訳にはいきませんものね。それではトロイの剣を託したプリアモスの気持ちを裏切ることになります。
…なのにパリスは、おめおめと逃げ帰りヘクトルの足にすがるという醜態をさらします。(いや、ここ本当に究極の演出ですね。ここまでやるなんて、感動すら覚えましたよ)情けない死に様をさらすほうがまだましなほどです。「こんな男のために、国を去ったのか」と言われた時のヘレンの泣きそうな顔といったらない。

パリスを渡せと言われて「これでおしまいだ」「俺の弟だ」というヘクトルも、すごく情けない顔しているし。
ここはヘクトルの強さであり弱さが出てますね。
トロイ軍の指揮者であり王族なのだから、ここは心を鬼にしてパリスを差し出さなければいけない筈です。それは本人の十分承知のはず。それが出来ないところがヘクトルの弱さ。
向かってくるメネラオスを刺し殺す瞬間も、目をぎゅっと閉じて「ごめんなさい」とでもたそうな表情なんですよねヘクトル…戦いの掟に反していますものね。
今までは愛国心が勝っていた彼が、弟の情のために己の信念をまげてしまうんですよね。

そして戦局はどんどんこじれていきます。
やっぱり戦闘シーンは簡潔な号令がメインなだけに、字幕のほうが引き締まりますね。それに単語なのでネイティブに理解しやすいので、「アーチャーー!」とか「トローイ!」とか痺れます。
「弓構えー!」とか「さあ行くぞー!」で翻訳としては間違ってないんですけど…。
ここ言わなくても解りやすいですが、スパルタ軍が無闇に攻めて城壁に近付きすぎて射手隊の餌食になってしまうのに、片やトロイ軍はすんでのところでヘクトルが退却させることで、彼の読みの深さ(というかスパルタ軍の浅さ)を示しています。

退却の際、「使いをやって死傷者を回収させろ」という言葉に部下が「お情け深い」というのですがここヘクトルがニヤリと笑うんですよね。ここ性格らしくなくて不思議だったのです。褒められて嬉しがる人じゃないし、嬉しいというような笑い方でもないので…吹替えで判明しました。「優しすぎやしませんか」なんですね。「お情け深い」は一寸嫌味が入った言葉だったんですね。それは一寸分からないや…。
「優しすぎやしませんか」だから自嘲気味に笑うんですね。

神様の秘密

この期に及んでやっぱり負けないブリセイス。 アキレスがタオル絞った後できちんとたたむのが気になる(笑)アキレスの性格的に違うなー。ここはプラピの性格でしょう(結構几帳面なんですね) タオルの投げ合いには笑いました。 その後の、ブリセイスのタオルの絞りの甘さも気になる。もっとちゃんと絞って!
ここでアキレスが言う「神様の秘密」はTV版CMで挿入されていましたね。私はこの言葉パリスが言ってるものだとてっきり思っていたので(多分みんなそう思ったのではないかしら)アキレスの口から出たときは驚きました。
「神は人間に嫉妬している。人の命には終わりがあるから。散るものは何より美しい 今の君は美しい。今と言う瞬間はもう訪れないから」
吹替だと「今の君の美貌もいつか衰える」うーん…ここは字幕が好き。
アメリカ映画では一寸珍しい言葉ですね「散るからこそ美しい」という考え方は日本らしいと思います。 アキレスはこう考えているからこそ「名前を残す」ことにこだわるのでしょうか。

トロイ評議会

先手を打って攻め入るか、防戦にはいるかという評議で、ヘクトルは矢張り神官の意見に異論を唱え、神様に頼った判断を否定します。
ここ吹替えがなかなかセンスのいい訳で感心しました
「今日相手が油断してくれたからと言って、お礼をしなくてもいいでしょう」
字幕だと「今日相手が油断したからといって、攻めなくてもいいでしょう」
プリアモスの一言で攻め入ることが決定されたときの、ヘクトルのなんともいえない表情が大好きです。なんだか怒っているような、意見が通らなくて悲しいような微妙な表情…。
彼、この作品上で先にも意見が通らないというシーンがありますが、そこもちょっと悲しそうな顔をします。ここは軍の指揮官というよりも息子のような表情なんですよね。


 
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