映画「トロイ」ストーリー考察
プリアモスとヘクトル
このシーンはこの後に出てくるプリアモスとパリスのやりとりと比較するとよくわかるのですがプリアモスは王の顔をしています。
「どうして許した?」とヘクトルに聞きますけれど、きっと答えはプリアモスだって一緒だったはず。父も兄も弟王子には甘いので答えは一緒なのです。しかしヘレンを返す事を提案するヘクトルにそれを拒否するプリアモス。ヘクトルは「弟の悦びよりも国」のことを考えているけれど、プリアモスは王よりも父としての気持ちを選択したのでしょう。吹替だと「今まで数々の浮名を流してきたが」と父親に言わしめるパリス。今までどれだけの女を泣かせていたのだかパリス。本当に今までと違うのかパリス…。
きっと太陽神アポロが助けてくれる、というプリアモスに反論するヘクトル。
「アポロが軍隊を持っていると?」吹替は「アポロがどれだけの軍隊を指揮してくれると言うのです」ヘクトルが指揮官をしていることを考えると吹替いいセンス。
この時代背景。神は今よりはるかに身近で、その気配を常に感じるほどだったに違いありません。ヘクトルは神様を当てにしてはいないようですね…。この考えは終始一貫しているようです。
パリスとヘレン
ここはヘレンが勢いに任せてトロイに来たことまではいいが、このことが政治におよぼす影響(戦争)について比較的正確な判断をしているのに対して、パリスがあくまで個人的レベルでしかこのことを判断していないことがわかりますねえ。
「二人で逃げて、狩をして食いつないでいけば、召使など必要ない。それに、トロイも被害にあうことはない」と言っています。
このシーン最後にヘレンのセリフ「貴方は若いわ」吹替えでは「貴方は子供だわ」。どんなに好きな恋人でも結構正確なジャッジを下すのですねヘレン。
船上のアキレス
アキレスのトロイに上陸するまでの部下とのやりとり。
「他の船をまちますか?」というエウドロスの質問に「お前ら何しに来た」「誰のために戦っている」
「貴方です」吹替だと「ご主人様です」でした。「You are my lord.」みたいなことを言っているので、どっちをとるかって感じですね。私は字幕の方が好きです。
アキレスなんて部下に尊敬されているのだろう…。
こんなに傲慢で身勝手な性格なのに…と最初は思いましたけど、良く考えてみれば彼は自分を押さえつけ支配しようとする相手にのみ傲慢であって、誰彼かまわず身勝手というわけではないのですよね。
後になっておっとり刀でやってくるアガメムノン王などに比べれば、共に先陣を切って戦い、決して負けることのない最強の戦士アキレスと共に戦えることは戦士にとって光栄なことに違いないでしょう…。
そういえばオデッセイウスも「一緒に来て、妻を安心させてくれ」と言ってますものね。(このセリフも自分のため、と言わないところが、彼のちょっとひねくれた性格が出ていて好きです)
上陸直前(ヘクトルの後)、ミュルミドンに演説?をするシーンがありますが、ここがはやり一番アキレスが戦いをどのように考えているか分かります。生きて栄光が得られればよし、よしんば戦死したとしてもいかに勇ましく戦ったか、後世に名を残すような戦いをしてこい。って事なんですね。
城壁のヘクトル
ここのヘクトルの演説は先のアキレスと対照的ですよね。
「私は今まで誓ってきた掟がある。それは実に単純だ。」
「神々を敬い、妻を愛し、国を守れ」「国は母だ。母を守れ!」
アキレスにとって「何かを得るべき戦い」で、対してヘクトルにとっては「何かを守るべき戦い」なんですね。
こんなにも考え方の違うのに、部下にはとても人望の厚い二人。どちらも己の信念に濁りがないからでしょうか…。
全然関係ないけれど、ヘクトルの馬の敷物どうしてあんなに派手(白黒チェッカーフラッグ)なんですか…。本人が地味な性格だからせめてこれくらい派手にしましょう、という部下の配慮?(な訳が無い)