■映画「トロイ」考察■ストーリー考察2■

■映画「トロイ」考察■

映画「トロイ」ストーリー考察

スパルタの兄弟王

トロイの王子兄弟喧嘩の直後のシーンでアガメムノンとメネラオスの兄弟王を出してきたところでこの脚本の巧妙さに気が付きました。
ああ、ここヘクトルとパリスの兄弟関係をかけているんだな、と。 アガメムノンが弟に同情しているようにみせかけて、トロイ攻略の口実としか見ていないのに対してヘクトルは怒っているけれど結局はパリスのことを見捨てられないんだよな…。
そして「栄光はいつも兄上に集まるが、それを私がうらやんだことがあるか?」「ない。お前はいつも名誉を重んじる」というセリフ。ヘクトルが「実際の戦争に栄光などは無い」と断言していることを合わせると実に興味深いでです。

いとこ

遺跡で剣術練習をしているアキレスとパトロクロス。パトロクロスかなりアキレス(ブラピ)に似ていましたね。最初合成か?と思うほどでした。騎馬隊が来ていることに気が付いたアキレスが脇においておいた槍を足でポンと跳ね上げて投げるシーンはいったい何回NG出したんだろうと夢のないことを考えてみたりして。

イタケ国の王オデッセウス。機知に富んでいて良い人ですね。アキレスを戦に誘う交渉もアキレスの性格を読んだ良いものでしたし。「いとこを策にかけるな」というアキレスに対して「お前は剣、私は策士」とニヤリと笑うところも素敵。流石に「オデッセイア」では主人公なだけありますね。
この直後のセリフ「神々からの賜りものだ」は吹替「神からの賜りものは生かさねば」で、「お前を策にかけているんだ」というのを隠さないところが二人のさばさばした関係を示しているようで好きですね。

アキレスが母親に会いに行くシーンは実に印象的。 原典だとアキレスをトロイにやるのがいやで女装させて女官の中に紛れ込ませるという荒業を繰り出しますがそれはそれで見たかったかも。

貴方がここにとどまれば素晴らしい女性に出会う。子が生まれ、孫が生まれればたとえ貴方が死んでも彼らの心の中に生き続ける。でも彼らが死ねば貴方の名は消えてしまう。 愛しい息子だから生きて欲しいけれど、彼の望むことが武勲を挙げて後世に名を残すということならば貴方はトロイに行くべきだ。例えもう会うことがなくても。(ここでアキレスが死ぬことを暗示している)
この親にしてこの子ありといいますか…息子の性格を知っていると言いますか。

出来の悪い子程かわいい

トロイでの凱旋パレード…どうしてパリスとヘレンが先頭なんでしょうね。 ここはどう考えてもヘクトルが先頭の気がするのですが…でもまあ実際に宮殿に入るシーンではヘクトルが先頭でしたけど。
父王プリアモスのピーターオトゥール、さすが名優良い演技します。父親としての顔と王としての顔の演じ分けが唸ってしまうほど。
神官たちと会話をしていて、息子たちが戻ってきた、と気が付いたときの顔が何だか妙に可愛らしい。 先のレビューでも上げましたが、第一王子ヘクトルの抱擁のシーンは王と誇らしい息子を迎える父親の顔なのに、第二王子パリスはキスの直前の「帰ってきたなドラ息子」とでも言いたそうに片方の口元をニヤッとさせるのには本当に感心しました。
ヘクトルは一介の武将扱いなのに、パリスいっぱしの大人扱いされていないのね。

そしてヘレンを紹介したときにこれが「スパルタの…」「今はトロイの、です」と言い放つパリスに折れてしまう所がいかにプリアモスがパリスに甘いかを如実に示していますね。
ヘクトルこんな良い人の上に、愛妻家でいらっしゃるとは!しかもアンドロマケすごく良妻じゃないですか…人徳の厚い人には良い奥さんが付くもんだなあ。しかも息子を見るときの「大きくなった」という声のなんて嬉しそうなこと…。 対して…いやもう何も言うまい。

 
考察一覧