映画「トロイ」ストーリー考察
テッサリア
テッサリア軍とスパルタ軍で双方の最強の戦士を戦わせて勝敗を決めようと言うくだりで、
テッサリア軍:「ボアグリアス!」大騒ぎで勇ましく登場なのに、
スパルタ軍 :「アキリーーース!!」シーーーーン。
めんどくさそうに出てくる位のものだと思ったら、戦線に参加すらしてない。アガメムノン王への忠誠心ゼロ。
では何処にいるかと言えば、女と寝てるし(しかも二人だ)。彼は特別女性に執着しない(愛だの恋だの言わない)ということの表れ。もうここでやらかしてくれるわね。主人公なのになんて登場の仕方だ…。
「あなたは女神から生まれたから決して死なないと…」「だったら盾などいるか」まったくそのとおり(笑)。ここでアキレスが人間であることの強調をしています。
「相手はすごい大男だった。僕なら戦わない」「それで名が残せるか」
…あー、この人の戦いの意味ってここなんですね。
だから、ボアグリアスを瞬殺したあとでテッサリア王に名前を聞かれて答え、「覚えておこう」というセリフが生きて来るんですね…。今一つ気の乗らない戦いでも彼なりに意味のある戦いになったと言うことで。
「この大勢の兵隊を見ろ。彼らを妻の元へ返してやれ」
字幕「"王自らは戦わず"いつもそうだ。」
吹替「自ら戦う王様ってのをみてみたいもんだな」
いきなり強烈な嫌味。嫌味なことを言っている部分や遠まわしな言い回しや声の調子が分かるので吹替のほうが好き。
同盟の祝宴
トロイとスパルタの同盟祝宴のシーンは師匠が「どうしてトロイの兄弟王子は二人して顔が斜めなんだか…そこまで似せんでいいっちゅーの(笑)」と言ってましたのでチェック。オーランドが良く小首傾げるのは知ってましたけど…バナ登場シーンからしてもう顔が斜めです。これ以降気になって気になって仕方がないったら…彼の癖なんでしょうね…このシーン以降注意されたのかまっすぐなんですけど、演技に熱が入ってくるとやっぱり斜めになるバナ。(笑)
祝杯を挙げるために起立するとき、ヘレンのほうばかり見ているパリスを肩で小突くように立ち上がるのは私の気にしすぎでしょうか。
パリスとヘレンの逢瀬のシーン
パリスが入ってきていきなりかんぬきかけるところ、彼のプレイボーイ百戦錬磨な感じがしてやらしい…(しかしよく考えてみたら着替えようとするのに鍵をかけないヘレンも結局誘ってますわね)
パリス超プレイボーイなセリフ攻撃だなあ…これは互いに好き好きになったと言うよりもパリスの押せ押せ攻撃にヘレンがやられたに違いない。
ここ、なかなか決め手が見つからないのですが、もしかしてヘクトルはパリスとヘレンの事を知っていたのではないかと思っています。パリスが階段を上がるところを見ている気がしますし…。
しかしだとしたらヘクトルが注意しないはずが無い、とも考えられるのですがよもやこの二人がそこまで浅はかだと思っていなかったとも考えられます。
「くぅーん」攻撃
トロイに帰る船上のシーン。この兄弟の関係を実に上手く表現しています。
「ポセイドンが祝福しているような良い朝だ」
「朝祝福してくれても午後荒れることもある」
「兄上 僕のこと愛してる?」「敵から守ってくれる?」
「お前が10歳のとき、父上の馬を盗んだときもそう言った。今度は何だ?」
そんな子供のころからパリスは困った子で、ヘクトルは弟の尻拭いやってきたんですか!!(涙)大変だなあヘクトル…原典だとパリスは捨て子にされていたので成人してから兄弟として付き合っているのですが…私はもうここでやられてしまいましたよこの脚本に。これだけの言葉でここまで解らせる?
しかも、そのあきらめに近いような口調で「今度は何だ?」もう既に苦労をかぶる覚悟ですか…。
船底に下りてヘレンを発見するシーン、何でしょう…このデジャヴと思って後に師匠と語っているときに発覚しました。
ア○フルのチワワ!!家出して帰ってきたと思って扉を開けたら、女作って帰ってきよった!しかも大変なおまけ(CMだと子供だけどさ…こっちは国政問題)までくっつけて!!
しかもこのチワワ「くぅーーーん」といえば全て許されると思っているな!!
あーもうそうだよ、パパ(ヘクトル)は許しちゃうよ!!!まさにどうするアイ○ル?ご利用は計画的にだよ!(結局計画的にいかなくてトロイ滅びちゃうけどね…とほほ)
これ以降パリスのあだ名は「チワワ」に決定となりました。
ここでの口論は二人の性格というか考え方の違いを表現していますね。
ヘクトルの怒り方が「この和平を結ぶためにどれだけ苦労したか。自分が何をしたかわかっているのか?」
対するパリスのセリフが「好きなんだ」(答えになってない)国政に興味が無く、ヘレンをさらって来たことは飽くまでも個人レベルの問題程度にしか考えてない。
で、ヘクトルが『こいつ何にも分かってない』と言うような小さい怒号を上げる演技が素敵。
「どうせ遊びなんだろう?商人の妻や神殿の女に愛を囁いて愛を理解したと思っている。父への愛はどうした?女を奪って父上の愛に唾を吐きかけた。国への愛は?女のために国を焼くのか?女の為の戦いなど」
吹替「あの女の為に戦争は出来ん」うわ、もうそこまで読んでるんですね。(読むか)
ヘクトルは国のことを本当に想っていて、父王を敬愛しているのが分かる反面、パリスが過去に数々の浮名を流していたこと、それをヘクトルが知っていたと言うことを示しています。
パリスの「聞いてくれ」の言葉に、いいたい言葉をぐっとこらえて『どうせろくなこといわないんだろうが聞いてやろう』という表情のヘクトル。
「兄上に悪いことをしたと思っている。父上にも。ヘレンを還すというなら還せ。」
ヘクトルの荒い息のつき方が、どうにか怒りをこらえていますって感じ。
でも「僕も一緒についていく」の言葉に大きくため息「行けば殺される」。やっぱりろくなこと言わない。
パリスの「戦って死ぬ」という言葉にまたヘクトルの怒りが湧き上がります。
「愛のために戦うだと?お前は人を殺したことがあるのか?人が死んでいるのを見たことがあるのか?」
「ない」(またこいつもはっきり言うなあ…)
「俺は殺したことがある。死ぬのを見たことも。実際の戦はそんな栄光でも詩的でもない。」
ヘクトルが実際に戦地に赴いて戦っている戦士であること、対してパリスが戦場をしらないボンボンであることがよくわかります。
その重さを知らない者に「戦って死ぬ」と軽く言われたことに立腹するのも当然です。
それから「詩的」という言葉で原典「イリアス」を匂わせていますね。美しい叙事詩も実際に描かれている現場がどんなに血生臭いものか…。
この「栄光」と「詩的」という表現、吹替ではなくなっています、残念。
「ヘレンを戻すなら僕も一緒についていく!!兄上には頼まない!」というパリスに向かって「もう遅い」とトロイに船首をむけるヘクトル。ここ吹替だと「もう頼んだも同じだ」で。あああ、なんて苦労性…そんなに「くぅーん」攻撃は強力なんですか…。
もうヘクトルこんな困った弟はヘレンと一緒にのしつけてスパルタに叩き送れば良いのに…。
そしたら万事解決と行かないまでもここまで拗れる事もなかっただろうに。