映画「トロイ」考察>キャラクター>パリス

■映画「トロイ」考察■>キャラクター>パリス

映画「トロイ」のキャラクター考察

■パリス■(オーランド・ブルーム

パリス パリス本人と言うよりパリス役俳優語りとなってしまう可能性大。この作品、誰も彼もイメージに外れることがないのですが一番「らしい」といえるのはパリス。
彼以外にパリスを演じることの出来る俳優さんはいません。美しいけれど嫌味のない外見。そして夢見るような瞳とあの猫口。監督インタビューでも「オーランドは完璧なパリスだった。」と絶賛?されていました。

アキレスやヘクトルには注目できてもパリスにはさっぱり注目することが出来なくて、ラストでアキレスを射殺すときの一生懸命振りが「アキレスがお兄さんの仇」だからということに気が付くまで一体何度劇場に足を運んだことか…。普通一回目で気が付くだろう。
師匠には「あんたいくらなんでもパリスに興味なさすぎだよ」と叱責されました…。
なのでここの内容はほぼ95%師匠の解釈です…情けなや。

オーランドのインタビュー(公式サイト)で「パリスは自分の行動がどんな結果を起すか考えず、感情のままに動く人間なんだ。戦うことを知らず、愛のため、感情だけで生きているんだ。」とか「彼はトロイ王プリアモスの次男として、とても狭い世界で大切に育てられた存在で、強い戦士になることや、王になる者としての責任を考える必然性もない。兄のヘクトルがすべての責任を背負うものだと考えているんだよ。」には本当に大爆笑。
素晴らしいオーランド。実に的確にキャラクターを掴んでます。と思ったものです。
それは確かに伝わってきました。

私の中で彼のキャラクター性を如実に示していると思うセリフはここです。
「僕のこと愛してる?」
「敵から守ってくれる?」

自分は愛されているという自覚があるからこそ、言える言葉です。(お兄さんは言えないよねえ…涙)
そして、ミネラウスが「共に戦ってくれ」と言うのに対して、パリスは「守ってくれる?」というところが自分は出来れば敵前にたちたくないという意思の表れ。
チワワはいいなあ…その可愛らしさだけで世間を渡っていけて。

だから、木馬のシーンで「焼きましょう」と提案してみたり、城壁内に引き込んだときに「皆、王子が死んだことを忘れいている」「今は貴方が王子よ 誇りを持って」なんていってるのを一回目に見た時は『何を今更言ってるのあんた』などと毒づいていたのですが、パリスはこの作品を通じてちゃんと成長しているのですね。

いちばん解りやすいのは前半で「二人で一緒に逃げよう」と言っていたのに最後には「僕はここに残る」と言った点です。
『自分の行動に対して無責任かつ対処できる能力も無かった男が、責任感に目覚め、自分で対処しようと行動しだすと言う点で変化』(メール引用)なのですね。

ではその間にどんな心境の変化があったかというと、

■ヘレンに足を縫ってもらうシーン
「僕は卑怯者か そうだ 恥は捨てた 名誉も ただ死ぬことが怖くて。君が見ていた 父上も 兄上も トロイ中みんな―」
「貴方は立派だわ 愛の為に戦った」
「君を裏切った」
「メネラウスは英雄だった 彼が戦いに出ている間、私はいつも海に身を投げたかった」「英雄は要らないの だた一緒に年を重ねていく愛がほしいの」 こんなことを言っていたと思うんですが。

どうも、前半は自分の言葉に自分で傷つき、後半はヘレンの言葉でも傷ついているようですね。
(私指摘されるまで、傷が痛いのかな、と思っていました)
おそらくヘレンは慰めのつもりで言った言葉なのでしょうけれど…卑怯者であったことを(捨てたとは言っているけれど)恥じているところに、「元ダンナは英雄だった、けれど私は英雄は要らない。貴方を愛している」取り様によっては貴方は英雄らしく戦わなかった、なんて言われたらやっぱり傷つくよね…そりゃ最後に「卑怯者を愛せるか」って聞きたくなるわ。

だからこの後、急に弓の練習を始めるわけですね。

こうしてみるとこの兄弟、才能を認められるのが哀しいのが兄で、凡庸を認められるのが哀しいのが弟なんですね…。かなり勝手解釈ですが。(ここ解釈間違い…後日訂正)

■ヘクトルとアキレスの一騎打ちのシーン
「兄上が一番だ」
「お前はトロイの王子だ」
「名に恥じぬよう」
のシーンなのですが、師匠曰くポイントは「名に恥じぬよう」の原語。
「make me pride.」というようなことを言っているみたいです。多分。

直訳的に訳すなら「私が誇りに思う様(な王子)になってくれ」ということでしょうか。
あそこで眉根を寄せるのは彼なりにその言葉が心に響いたということなのでしょう。

その後の、一騎打ちを見守るトロイ王家のシーンも、父王の次にアンドロマケよりもパリスを重点的にショット入れているので何らかの心境の変化を表現したいらしい、ということはわかるんですが、顔の表情からはよくわからないんですけれど…。わかった人いるかしら。
多分あそこでアキレスの顔を心に焼き付けたから、最後のシーンで彼に向けて矢を射ると思うんですけれど。

「名に恥じぬよう」を原語で解釈をすると木馬のシーンの「誇りを持って」が生きてきます。
吹替だと「お兄さんを喜ばせて」なのでさらによくわかります。
当初は「何を今更」と思ったこのシーンも、ああ彼も「兄上が誇りに想う様に行動しよう」と考えているんだな、王子としての自覚を持ったんだな、と思うと共感できます。

ただ、この解釈で行くとヘレンという女性の存在意義がいまいち薄いんですけど…。
今まで女を口説いて回っていた彼が一人の女性を愛せるようになった、という点は父王が言うように大した変化なんでしょうけれど。確かに、今まで戦地を知らなかった彼が「メネラウスと戦う」と言い出すのは変わったと言えるのかもしれませんね。でも「敗北者は夜更けに焼かれるでしょう」と言った後でお兄さんをちらっと(というかしっかり)見るのはよせ。たよるな(笑)

ということで、愛する人の言葉に傷つき、兄の死という大きな犠牲を払った上で、責任感に目覚めた彼ですが、結局トロイ国は滅びてしまう上に、頑張って倒した兄の仇が、裏を返せばブリセイスの愛する(傲慢な性格から平穏な生活を求めるようになった)アキレスだということが、この物語の悲劇性であり、納得のいかないと感じる点であり、パリスに共感しづらい原因なのですが。

■俳優について
パリス演じるオーランド・ブルーム。説明するまでもなく現在人気ナンバー1とされる若手俳優。
実際可愛い顔しているよね、彼って。ピンナップとか見ると「おっと。可愛いじゃん」とうっかり思ってしまう。流石雑誌の投稿で中学生に「母性本能をくすぐられる」なんてかかれるだけの事はある。28歳で中学生の母性本能をくすぐるって一体…(大爆笑)
今回の役は「指輪物語」や「パイレーツオブカリビアン」と比較して格段に「内面の成長」を演技として表現することを要求された役柄だと思います。個人的に外見の美醜よりも、クセのある演技をする人が好きなので、私にはまだまだ若造って感じですね。
人柄は大変いい子らしいし、読難症を克服した頑張り屋さんらしいので、これからいい監督さんに抜擢されて素晴らしい演技力を身につけてくれることを祈っております。
 
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