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映画「トロイ」のキャラクター考察

■ヘクトル■(エリック・バナ

ヘクトル 女ならやっぱりヘクトルにやられますわね。
こんな人の下に嫁にいきたいわよ。苦労性ですけど。既に妻子もちで3200年前に死んでますけど。
彼は『強情傲慢アキレス』と『甘ちゃんチワワパリス』の両方が対比対象なので、やはり印象がいいです。ツベコベすればするほど株が天井知らずに上がり、下がることが無い。
(ウソ。一寸下がるときも有るけれど、却って自分の好みキャラなことが判明するので益々熱狂する)

かなり妄想入っている解釈だと思いますが、つべこべ語って気が付いたのは
父上といいながら、実際父親と息子のような会話が一切なく、飽くまで王と腹心の部下のような会話ばかりで。
意見を言ってプリアモスに反対されても、決して反論しないで何だかさみしそうな表情するのはもしかしてヘクトルは父親に愛されているって感覚が薄いのかな?って。

もちろん彼は妻子もある立派に成人した男性ですが、どんなに年を重ねても親子って親子だから…子供扱いと息子扱いって違う。
私の考える息子扱いというのは例えば「ブロウ」で描かれているような、才能がなくても、どんなに凡庸であっても、たとえ人から後ろ指を指されるような犯罪を犯したとしても、お前のことを人として愛しているよ、というような気持ちのこと。
あと「ギルバート・グレイプ」も(親に)正当に評価されていない、というストレスを実に上手く演技として表現するから、正直イライラします。(好きだけど)

才能や功績を認められるのは勿論嬉しい。だけどその才能が枯渇したとき私は果たして本当に愛されるのか。優秀な猟犬が老いた時に、銃口は彼に向くのではないか。主人が可愛がっているものは有益さであってその犬そのものではないのではないか。
時々そんなことを考えて落ち込むことがあります。

多分プリアモスは兄弟王子両方に同じように愛情をかけていると思うのですけど(出来が良くても悪くてもお前たちは大切な息子なのだという気持ちで)、 ヘクトルサイドから見たら「自分は(努力して)有益だから愛されているのではないか。」という結論に達しているのではないかなって。
有能じゃなくなったら愛されないのではないかというやや強迫観念に近い感覚があるからいまいち踏み込んで意見がいえないのかな、って。
自分は愛されている(ちょっとのわがままは許される)と思っていたらもっと噛み付いてもいいとおもうんですよね。

大体一番最初からして「わが息子」で抱擁、「パリス」でキスだから…。名前を呼んであげてよお父さん…。 最初は「パリス子供扱いだ(笑)」と思っていましたけど。

だから最後の言葉が、ものすごく硬い表情で
「(国や父上のことを思って)精一杯お仕えしました。(けれどいろいろ御気に障ることをいってしまって)今までの無礼をお許しください。」なのかなって。
吹替だとよりそのニュアンスに近い訳になっていたと思います。字幕の方が、この人この局面になっても甘えたことが一切言えないんだな、という気がして好きですけど。

それにかえすプリアモスが無言で「額のキス」なのにはもう…(涙)
今この瞬間あなたは「有能な部下」でなくちゃんと「息子」なんだ、って。
今まで反論してきた事だって、国を想っての事だとちゃんとお父さんはわかっているんだよ。
嫌われてなんかいないよ、ちゃんと愛されているんだよ、って言ってあげたい気持ちになります。
一度離れてから、もう一度プリアモスがヘクトルの名前を呼んで「お前ほどの息子はいない」というのもダメ押し…。
でもってこの時のヘクトルの表情がなんだか嬉しいんだか悲しいんだか、戸惑ったような顔なのが「この人、息子として褒められることに慣れてない」って感じなんです。

彼は公で嬉しそうな顔をしたところを見たことがない。評議会で「ヘクトルもいる」という家臣のセリフに、顔は動かすのにちょっとも嬉しそうな顔をしない。(だから「お情け深い」で笑うことに違和感を感じた)指揮官として評価されることはあんまり嬉しいことじゃないのかな、って思いました。有能になればなるほど、父王から「息子」として見てもらえないのが寂しいのかな…。

アキレスの陣屋で涙しながらに遺体を還して欲しいと懇願するような酷いことになると知っていたら、プリアモスお父さんももっとヘクトルに息子としての愛情を注いでやったでしょうにね…。

■俳優について
ヘクトル演じるエリック・バナ。オーストラリア出身のコメディアン。これでコメディアン…全然想像が出来ない。DVD特典映像でオフショットが出るのだろうか…ご陽気にパリスの真似(人物模倣が得意)とかしているのだろうか…見たくないような見たいような。
インタビュー記事等を読んでいるとプラピのインタビューに乱入して去っていったり、プラピを「足フェチ」呼ばわりしていぢめて見たりとお茶目なことをしているのでやっぱり天賦のコメディアンなんでしょう。

彼の前作品、「ハルク」見ておけばよかったと一寸後悔。原作をしらないし緑の巨人を見てもビジュアル的に面白くないなと思って止めたんですよね。どちらかというとブラピ始め、皆が彼の演技力に仰天したという「チョッパー・リード 最凶の殺人鬼」を見てみたい。
ブラピ、バナをこの映画に推薦してくれてありがとう。そして、彼のようなキャリアの浅い俳優を自分と同列に扱うポスター(サントラジャケット)を認める姿勢に貴方の映画にかける情熱を感じます。(俳優によってはそうはいかないらしい…)また貴方に惚れ直します。

 
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