ハッピーフィート(はっぴーふぃーと)

キャッチコピー:
キミの”心の歌”は何?

ストーリー

寒い南極、ハートを歌で伝えるアツい世界。その中に、歌えないペンギンが、ただひとり――。
彼の両親は、ごく普通に出会い、"心の歌"から愛が芽生え、そしてその愛が卵になった。
でも、卵から出てぎた子どもは、ちょっと変わっていた。彼は、皇帝ペンギンにもかかわらず、おそろしく歌がヘタだったのだ――!

予告

ペンギンが流暢に歌い・踊る!最近のCGアニメーションはついにこのフワフワ産毛感を表現するまでに至りました!すごい!!
しかも何気に吹替えキャストが豪華です。これは激しく字幕版を希望したいのですが子供向けの常として吹替え版が蔓延したら嫌だなあ。ニコールとヒューが夫婦役か…(いや、別に他意はございません)

レビュー

お薦め度:.★★★★☆.
子供も、一緒に行った大人も楽しめる作品。
広げられる風呂敷はなるべく広く。ペンギンの世界は宇宙までも(笑)海を泳ぐ彼らはまるで空どころか、宇宙を自由に旋回しているよう。

ペンギンですから基本メリハリはっきりの燕尾服。タップダンスにはピッタリの衣装です。基本的な配色はしっかりと守りながら女性はよりセクシーに、男性はよりダンディに。マンブルは産毛のまま(笑)可愛いんだようようよう。それだけで十分。
ペンギンがタップダンス!あの短い足で!正にモーションキャプチャー技術の賜物といえましょう。足踏み地団駄している様に見えますがそれもまた可愛いので許す。ついついつられて自分の脚がピクピクしてしまうのを固く脚組みすることで何とか阻止しました(苦笑)

何千頭ものペンギンの群舞は圧巻。足並みもばっちりそろっていていい感じ。CGだから当たり前って言うのは野暮。ものすごく絶妙なばらつき感がリアルです。私はミュージカル映画は押並べて好きなのですが、より細かく判断するに音楽がいいことよりもダンスが素晴らしいことに感動を覚えるのだと痛感。しかも、チームの同調性に心が躍ります。そういえば前からチアリーディングやリバーダンスが大好きで簡単に熱狂していたんですよね。そんな私は文句なしに大喜びの映画。

使用曲もヒットソングの編曲で耳になじみやすく、楽しい。(音楽もコーラスが好きなことを改めて認識)
マンブルのパパとママはニコールキッドマンとヒュージャックマンで何故この二人なんだろなー確かにお似合いだけど、と思っていましたが蓋を開けてみればニコールは過去にミュージカル作品で高い評価を受けているし、ヒューはもともとミュージカル俳優。なるほどと納得です。欲を言えばもっとこの二人が歌うシーンが欲しかったかな。

子供向け作品だからといって侮ってはいけません。
師匠はペンギンプリークなのでダンス踊るペンギンなど認めないとお怒りで、私も子供向けだしアニメだしもっとその辺いい加減かと思いきや踊ること以外のペンギンの習性に関しては基本的に忠実なのには驚き。流石に「ベイヴ」と言う牧歌的で子供向け映画のふりをして、内実は強烈にシビアでリアリズムに富んだ映画を作ったスタッフだけあってその辺の妥協はないようです。

「ベイヴ」でも動物と人間の微妙な価値観の違いを表現していましたが、今回はペンギンがダンスをするよりファンタジーな世界でよりシビアで厳しい問題を提起してきました。まさかこちら方面に世界が展開するとは思っても見ませんでした。
あああ、出た「ベイヴ」ワールド必殺の「○○のパラダイス」……いたたまれません。
私は作品において完全なる巨悪や、自覚を持って悪を成している対象に関しては比較的冷静に対応できるのですが、この手のごく当たり前の人間が無自覚に行っている非道や自己中心的行動にはひどく動揺し打ちのめされるのです。

私もう動物園にも水族館にも行けません…。人間はエイリアンですか。拉致ですか。そうですか、そうですよね。人間って本当に罪深い生き物です、すいませんすいませんすいません……。(激しく落ち込み)

<余談>私は「ファインディングニモ」を見たことはないのですけれど、あの作品を見てクマノミの人気が出て各地で乱獲騒ぎが起こったことは非常にとほほだと感じていました。あの作品は表面的にクマノミを扱っただけで、内実は親子愛で、海で捕獲されたクマノミが故郷に父親の元に帰りたいと切望して冒険する話だと思っていました。なので、この作品を見ていたずらに自然から捕獲したクマノミを飼育することがこの作品に本当に感動したことにはならないと思うのです。<余談終わり>

マンブルがどんなに必死に訴えてもエイリアン達には伝わらないんです。言葉が通じないって本当に切ないことです。で、通じることといえば(正確には通じているとは言わないかもしれないが)言葉を必要としないダンスなんですよね。
これは多分(観てもいないが)『バベル』にも通じることかと思います。言葉や固定観念に縛られて聞く耳を持てない私たちも何とか想いが伝わるようになればいい、そんな風に感じました。

子供向けアニメーションとしてもスリリングでハッピーで楽しいし、一緒に行った大人としてもビジュアルの美しさや音楽の楽しさ、さりげない深いメッセージに共感できると思います。
私は吹替え版を試写会で鑑賞しましたが、歌のパートになると字幕になって元キャスティングの声は堪能できます。子供は歌詞よりもリズムを楽しむと思うのでこれでも大丈夫という判断かな?吹替えキャストはマンブルのママが冬馬由美さんで…他は判らない人ばかりでした。…すいません。

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