プラダを着た悪魔(ぷらだをきたあくま)

キャッチコピー:
上司と闘い、恋に悩み、みんな幸せになりたいと思ってる。

ストーリー

大学を卒業し、ジャーナリストをめざしてNYにやってきたアンディ。オシャレに興味のない彼女が世界中の女性達が死ぬほど憧れる仕事を手にしてしまった!それは一流ファッション誌”RUNWAY”のカリスマ編集長ミランダ・プリーストリーのアシスタント。しかし、それは今まで何人もの犠牲を出してきた恐怖のポストだった!ミランダの要求は、悪魔的にハイレベル。朝から晩まで鳴り続けるケイタイと横暴な命令の数々、その上”センス、ゼロ!!”と酷評され、アンディはこの業界が努力とやる気だけでは闘えないことを思い知らされる。キャリアのためとはいえ、私生活はめちゃめちゃ。カレの誕生日は祝えないし、友達にも愛想をつかされる。この会社で、このままでいいの?私って、本当は何をしたいんだっけ?

コメント(予告編)

タイトルににやりと笑ってしまう私は社会人。ムカツク上司を影でこそこそ呼ぶときってこんなあだ名をつけがちですよね。努力とヤル気って大切だけどそれだけではどうしようもないと知っていくのも大人の社会と言うものです。おしゃれに興味が無いという点に非常に共感を持つ私としては、アンディはこの苦難をどうやって乗り越えていくのか見ものです。(まあ、おしゃれに気を使って目覚めていくんだろうけどだ…どうせ)

レビュー

お薦め度:.★★★.
アン・ハサウェイって他になにやっていたっけ?と調べてみたら『ブロークバック・マウンテン』のほかはプリティシリーズを演じている女優さんでしたね。
私はシンデレラストーリーがあんまり好きじゃないし、もしかしたら不機嫌になるかもと思っていた(だったら行くなよ)のですが、案の定非常に不愉快な気持ちになって帰ってきました。本来なら綺麗な衣装と可愛い女優さんを堪能して「まあ、可愛い話ね」と頭空っぽにして見なくてはいいけなかったのでしょうけれど私には無理でした。面白くなかったとは言わないけどね。

まずミランダはアンディを雇う前に多くのアシスタントを雇い、首にしてきたようです。曰く「アシスタントを募集すれば沢山の女の子が応募してくる、うちの雑誌の信仰者も多い。でもバカが多い」だからファッションに興味のないアンディをあえて雇ってみた、と言うようなことを言っています。
ここで言いたいのは何故「今までのアシスタントはバカが多いのか」そして何故「アンディはバカではない(というか立派な経歴書と完璧なスピーチが出来たのか)」ということです。(知識があると賢い・気が利くは全く別の問題ですが、この作品では同列のようなのでそう仮定しましょう)

例えば、20万円あったら何をする?
多分ファッションの信仰者たる前者の女の子達は20万円のバッグを買うでしょう。でもアンディはそのお金を持ってジャーナリストになる為のセミナーに通ったり関連書物を購入する費用に充てたりしたはずです。
お金を何に使おうがその人の勝手です。(まあ私は知識を詰め込むことの方が好きなので、ファッションに費やすことに否定的なのはご容赦いただきたい)知識だろうがファッションだろうが、何に入れ込もうとそれはその人個人の自由ですから知ったことではない。前者は自らの表面を磨くためにお金を費やし、後者は己の内面の知識を増やすためにお金を使う。同額のお金と時間をファッションに費やすよりも知識に費やした人の方が知識に富んでいる(バカではない)のは比較的簡単な理屈です。「バカ」というけれど本当に雑誌の崇拝信者が基本常識も知らないようなバカばっかり来ていたとしたら、紙面の使い方を考えた方がいいかもしれないぞ。

ブランドはブランドで良い点はあります。それは一切の妥協を許さない縫製であったり、使い勝手であったり、洗練されたデザインであったり。でもとても高価なものです。自分のものにするには大金が必要です。
だからアンディは余りにも恵まれすぎていると感じます。ファッションセンスのない彼女のために手助けをするのはいいことだけど、それは専門の衣装さんに選んでもらい専門のメイクさんにお化粧を施してもらってされたことです。じゃあ翌日から、いきなりセンスのいい衣装を選ぶことができるのか?朝っぱらからフルメイクをきっちり施せるのか??
そんなわけがないじゃない。毎日来ている衣装は一体どうやって手に入れているの?彼女のお給料(薄給らしい)からは到底手に入るはずのない高価な洋服を毎日とっかえひっかえできるのか?衣裳部屋からセレクトしてもらったものを持って帰っているのでしょうね。
普通の女の子はそれが出来ないから、似たような安価な洋服を探したり、一生懸命メイクの練習をするのです。

自分の努力と能力を持って稼いだ給料で手に入れたものではなくて何がブランドファッションかと思うのです。身の丈にあった服でなければ洋服に「着られてしまう」のがオチです。

大学卒業したての女の子。ジャーナリズムを目指し、洋服に無頓着。そんな彼女がある日突然ファッションセンスもあり最先端の高級ブランドを毎日着ることのできる女性?そんなに簡単なわけがない。
またこれが腹立たしいことにアンディがちゃんと着こなせているんですよね。
何故って彼女はハリウッド女優のアン・ハサウェイなんですもの。数多くの女優志望者の中から選抜された若くても映画の主演の張れる女優です。そりゃ似合うわな。専門のスタイリストさんがいるんだもの似合うように着せてもらえるわな。(その代わり当然ジャーナリストとしての知識はないでしょうけれど。)これは冒頭不細工ななりのふりをしていたハリウッド女優が、まっとうな衣装を着せてもらえました、という話なんです。

片や確かにミランダは流石に一流ファッション雑誌の編集長だけあって、見た目のファッションだけではなくファッション史にも膨大な知識を持っています。彼女に限らずこのファッション誌に従事しているスタッフは矢張り自分の仕事に誇りを持っています。オートクチュールは衣装と言う芸術品ですが、そこから何らかのアイディアや技術が見出され日々のトレンドや服飾業界に反映されていることを承知している。その言葉には充分な重みがありました。

ミランダのような女性こそブランドを着る資格がある、と私は思います。
が、しかし私にはミランダのアシスタントに対するこき使い方が気に入らない。無理難題も大概むかつきますが、何よりも自分の双子達に対して甘すぎる。彼女達のわがままを聞けば愛情を示したことになると思っているのだったら彼女も大概バカなんじゃないかと思ってしまった。
なんでアシスタントが双子達の科学の授業の課題をせにゃならんのかね。それで彼女達が幸せなのかね。コネと権力にものを言わせてハリーポッターの新作読ませることが愛情??バカ親にもほどがある。将来この双子がどうなるか本当に楽しみですわ。

オチとしてはまあなんとなく無難に「それそれにはそれぞれの生き方がある」という風にまとめてなんとなーく納得されたようなオチだったのですがそれで本当にいいのかねえ?ミランダの方は失脚が先延ばしになっただけで、そのうち手ひどい転落をするのではないかしら。
まあ主人公はアンディだしね。アシスタント業は一年もたなかったものの、根性と粘り強さとファッションのセンスをもらってそれなりにいい経験をしましたってことになってよかったねって感じですか。

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