ブラック・ダリア(ぶらっくだりあ)

キャッチコピー:
世界一有名な死体、世界一忌まわしい謎。

ストーリー

1940年代のロサンゼルス。ダウンタウンの空き地で、身体を腰で切断された女の惨殺死体がみつかった。黒い炎を思わせる漆黒の髪、青白い肌を照らす黒ずくめのドレス。ハリウッド・スターを夢見ながら大都会の暗闇に葬られたその女を、人々は、「ブラック・ダリア」と呼んだ。やがて捜査線上に浮かび上がる一編のポルノ・フィルムの存在。ダリアと瓜二つの大富豪の娘、そして、彼女の一族にまつわるドス黒い秘密。ロサンゼルスの闇の中で妖しくうごめく事件の謎は、捜査にあたる若きふたりの刑事の運命をも狂わせていく......。

コメント(予告編)

トレイラーはずいぶん前から目にすることはあるのですが、未だに日本での公式サイトすら未完成のこの作品。アメリカでも評判がいいのか悪いのか今ひとつ判らない。
実際にあった未解決事件に独自の解釈を加えて進展するストーリー『殺人の追憶』、『フロム・ヘル』を彷彿とさせます。この手の作品は大好きですので今から期待しています。

レビュー

お薦め度:.★★☆.
製作者サイドはこのような犯罪映画を見に行く人が何を期待しているのかを余り理解していなかったようです。
もしくは私が「ブラックダリア」事件に対してもっと勉強をしてから望むべきだったか。

40年代のロサンゼルスと華やかなりしハリウッドが舞台。そのためか当時の映画ようなカメラワーク・構成・話し方を意識していることが非常に目に付きます。この辺りは『グッドナイト&グッドラック』をほうふつとさせます。(…実際のところ本当にリアルであんな話し方をしていたのだろうか?)
前半は手の込んだレトロテイスト編集なのですけれど、後半になると力尽きてしまったのか、そんなことは忘れてしまったのか(もしかすると私の目が慣れてしまったのかもしれないが)現在と大差ない編集になってしまっているところが残念です。

映画に何を期待するか。
実際に起こった未解決(猟奇的殺人)事件を扱った映画の場合、何を期待するかといえばミステリー・推理を楽しむことが出来る作品であると言うこと。ストーリーのオチともいえる真犯人とその動機です。未解決という答えの無い謎ですから、製作者側なりの答えを期待します。回答が実際のヒント(証拠物件や調書)に忠実であればあるほど、観客は現実と作品を重ね合わせ納得をし楽しむことができます。

しかし、この映画はその期待を大きく外されるものでした。死体には猟奇的な処理が施されていたということは事実と一緒なのですが、その手法や遺留品から手がかりらしいものは何一つ発見されない。なので現場百篇、状況が犯行を行った人間の心理を語るというミステリーとして期待はずれ。

■被害者の存在
身元が判明した為、生前のブラックダリアの捜査が始まり、彼女の半生が語られます。しかし観客側として余り明確な人物像が浮かんでこない。私はチラシや粗筋を読んでいたので、何故ブラックダリアと呼ばれていたのか、何故黒尽くめのドレスを着ていたのか知っていたのですが作品中で明確に語られることはありません。
回想シーンも無く、ブラックダリアはカメラテストのスクリーンの中でのみ生きている「幻の華」としてのみ存在します。
この点は、ハリウッド・スターを夢見ていた彼女が生前かなえることの出来なかった、「有名になる」ことが死体になってのみようやく訪れた皮肉を匂わせていて面白いと感じました。

■捜査員の存在
バッキー・ブライカートとリー・ブランチャードに関しても今ひとつ性格の違いが明確ではありませんでした。冒頭で「火と氷ほども違う」と称されているのですが、所詮どちらも若造ですので冷静さと言う点に欠けているように感じました。
当時、数十人という自白者が出るほどに有名になり、多くの人間を狂わせた「ブラックダリア」事件。本来は殺人課ではないこの二人、特にリーが捜査の一環として事件に巻き込まれていきます。
数多くいた「人生を破綻させた人間」の象徴としてリーの存在を選んだのですから、私としてはもっとリーにつっこんで何故ブラックダリアに魅了されるのかを描いて欲しかったです。何故ならば私もこの手の猟奇殺人犯罪に興味を持つ人間ですから。何故人は闇に惹かれていくのか、そしてやってもないい犯罪を張ったと自白するような人間が現れるのか。(最近ではジョンベネ事件の容疑者ジョン・マーク・カー容疑者がいましたね。)その解釈を製作者側に問いたかったのです。

■犯罪者の存在
ブルジョワジーたちの常識を外れた感覚・エゴが引き起こした事件であり、その業が怖いという話になってしまいました。しかも唐突に「父親の友人」とか言い出しますしその人間関係がわかりにくくて困りました。
確かに映画のセットを住宅にして売るなんて今の耐震偽装も真っ青な、裏ワザで巨万の富を築いた成金。その傲慢さ無遠慮さはあっけにとられるものがあります。ですが、実際に犯行を犯したのはこの一家というよりも妻とその情夫というオチでしたし、計画的というよりも嫉妬で発作的に殴ったことが発端ということになっています。

精神不安定とは言え、顔の傷に関して「私なりのジョーク」ではちょっと納得が行かない。
チルデンはセントバーナードの様な大型犬を剥製にすることが出来るのですから、人間はお手の物ということなのでしょう。(…と思って今剥製の作り方を検索したら、剥製は皮を剥いで詰め物を施すらしい。内臓を抜くのはミイラだわ…間違っていた)

でも、何故死体が切断されていたのか、という理由に関しては明確ではありません(運搬上の問題か?)し、殺すことだけが問題だとしたら山にでも埋めればいいので、何故あのような発見されやすい場所に放置した理由がはっきりとしません。犯罪心理としては被害者に愛情を持っていてせめて普通に葬儀を執り行って欲しいからか、己の犯罪に対する自己顕示欲からなるそうなのですけれど、今回はどちらでもないような気がするのですけれどね。


結局、猟奇犯罪マニアにとっては非常に肩透かしを食わされる作品でした。
まったく関係ないけれど論評ではジョシュ・ハートネット君の美しさを観ろ!と言っていますが余りカッコいいと思えるようなルックスではありませんでした。それよりも髪の分け目が非常に(ええ非常に!!)気になりました。あのくっきりとした生え際の薄さは何?わざとなの?それとも既に薄毛なのか?大丈夫か??

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