クローサー(くろーさー)

キャッチコピー:
カラダを重ねるたび、唇が嘘を重ねる。

ストーリー

通勤者であふれる朝のロンドン。新聞記者のダンは、車と接触事故を起こした女性を助ける。彼女の名はアリス。ニューヨークでストリッパーをしていたアリスは、その日ロンドンに着いたばかりだった。2人は恋に落ち、同じ部屋で暮らし始める…。1年後。処女小説の出版を控えたダンは、アンナという女性写真家に一目惚れする。アンナは恋人のいるダンを拒むが、ダンの心の揺れはアリスに見抜かれていた。一方、アンナはダンの悪ふざけがもとで医師のラリーと出会い、結婚するが…。それぞれの愛は、やがて運命的に交錯してゆく。

コメント(予告編)

ナタリー・ポートマンがストリッパーを演じる事がちょっとした話題となったこの作品。実際の作中のナタリーを観ると…うーん??あまりこの体にはそそられないなあ…(苦笑)スレンダー過ぎですもん。ストリッパーは少しぐらい肉付きがよくてもボーン!としていた方が!!(一体何の話だよ)
元々の原作者が脚本を務めているのですから、辻褄の合わないようなことにはならないでしょう。期待したいものです。

レビュー

お薦め度:★★★★
紹介しておいてなんですが、実は私はこういうラブコメとか恋愛の駆け引きとか恋愛を中心に据えた話って嫌いです。ナタリー・ポートマンとジュード・ロウが好きなので渋々って感じだったんです。
しかし相当に楽しめました。話自体が嫌いでもその作りが素晴らしければ楽しめるということを実感した作品です。予告編を観て興味をひかれた方なら是非。予告編と余り印象は違いません。

私が一番最初にぐっと来たのは「写真の女性はただ涙を流しているだけなのに、見ている人はそれを美しいと感じる。何故なら”美しい”と感じたいからだ」というようなセリフ。
「理解というものは概ね願望に基づくもの」という言葉もあるように、人間は事象に対して「こうあって欲しい」「こういう意味を内包して欲しい」と言う要求を無意識に持っていて、要求が満たされれば満足したり好意を持ちますが、満たされないと拒否したり時には無理矢理その要求に合わせようとするものなのですね。

この作品は事象と願望について恋愛の色々なパターンで表現していました。
言葉そのものを愛する人はこの作品の魅力が分かると思います。一応翻訳の方もその辺に気を使っていただいたようで、とても分かりやすかったです。同じ単語が時と状況によって、罵倒する為に使われたり、恋人を呼ぶ為に使われたり。表面的に同じことを示していても、それを表現する人の感情によって、またそれを受け止める側の心境によって全く違う。
真実であっても嘘になり、嘘であっても真実になることもある。

話の中心となるジュード演じるダンは、予告編では意味も無く皆にモテモテなプレイボーイという印象でしたが意外や冠詞に「わがままで、情けなく、いけ好かない」がついているので驚きでした。ジュードってチャレンジ精神がありますね。

彼の主張は「自分は他の人と恋愛したり寝たりすることは罪だと思わないけれど、恋人が他の男性と親しく話をすることも我慢ならないし、ましてや寝ることなんて犯罪に等しい」という実に傲慢極まりない理屈で行動しています。
それなのに何故か不快に感じさせない。共感とはいかないまでも、こんな考えの人が確かにいてこの人の行動理念はこうなのだ、と理解して引き下がらざるを得ないような説得力に溢れています。

自分の言葉で説明するのはとても難しいのですが…恋人アリスとの関係はダイアモンドでその他の女性との関係はガラス玉だと思っているような感じがしました。
途方も無く美しくカットされたスワロフスキーのアクセサリー。ダイアモンドと同じように大切にするし身につけるけれど、火事になった時に持って逃げるのは迷いも無くダイアモンド。…そう考えているような気がしました。
女性からすると人工的なガラスも鉱物のダイアも同様にアクセサリーというひとくくりだけど、男性からするとそのなかでもきちんとした違いがあると分かっているような…うーんやっぱり説明が難しい。

ダン以外も恋人のストリッパー・アリス、写真家・アンナ、医師・ラリー。それぞれの駆け引きが緻密。
中でも私は女性なので、男性側の理屈の方が楽しく鑑賞できました。
ダンとラリーがチャットでやり取りするシーンも現在ならではの表現ですし、ラリーがすっかり相手を女性と信じきっているところが笑いを禁じえませんでしたし、アンナとラリーが口論をするシーンもとても見応え?がありました。ラリーというか男性って恋愛のバロメーターと肉体関係の相性が完全に正比例していると考えているんですね。

とにかくセリフひとつひとつが実に洗練されていて素晴らしい。キザな言葉の羅列なのに薄っぺらくなく、計算しつくされた印象を受けます。流石に元ネタと同じ脚本家が書いたとうならずにはいられない。

ラストも【真実の嘘が入り乱れたこの恋愛模様の中で、自分を偽ることなくダンへの愛を貫いていたと思わせていたアリスが、ダンを納得させる為に付いた嘘が逆にダンにとっての真実になってしまうと。さらにアリスという存在こそがはじめから偽りで、だからこそあんなに自由奔放に自分の気持ちを表現できたのだということを暗に示す煉瓦(クローサーには異形煉瓦と言う意味もあるそうです)の壁面。】実に素晴らしい。

製作国がアメリカとは思えないほどヨーロッパ映画のような緩やかで美しい映像、美術論を美術として語るようなストーリー展開。
この手の作品としては実にパーフェクトです。

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