基本的な「踊る〜」ファンや「劇場版パトレイバー」を見ていない観客にはお勧めできる作りには仕上がっています。 所詮エンターテイメントなんでペラペラでもかまわないし、日本のエンタメ映画の中では(ここで邦画、ということを強調しなくてはいけないことがトホホなんですが)そうとうましな作りになっています。
…しかし、この人殆ど交渉してませんから。
まずこの作品「交渉人」というタイトルを冠しておきながら、主人公が全く犯人と交渉できていない点がまいった。
交渉人というものは、犯人と会話でやりとりをして相手の心境を推し量り無血で投降させるのが主たる目的のはずなのですが、この作品では完全に犯人の手の中で踊らされている。(「踊る〜」だけに(笑))
犯人からヒントを聞きだして犯人像を割り出すことは決して交渉人の仕事ではない。
この脚本家、ネゴシエイターとプロファイリングを完全に混同してやしないか?
なので心理的な攻防戦は全く期待できません。
■以下ネタバレ■隠し配慮なしです。
さて、オタク臭い発言で大変申し訳ありませんが、
いくら元々「踊る〜」が「パトレイバー」からオマージュを受けたと公言されているとはいえ、「劇場版パトレイバー2」と状況や演出方法が非常に似ているので笑いを禁じえません。
私は別に他の作品からインスパイアされて作品を作ることは否定しません。模倣こそ創造の第一歩だと考えるからです。しかしそれにしてもこの作品はちいと酷い。 「劇場版パトレイバー」の1・2作の面白要素の表面部分をかき集めて配置した模倣ですらない劣化コラージュ作品。でも素材がいいからそこそこの出来には仕上がっている。
さて私がどの辺にチェックが入ったのかと言うと、
◇「クモ」たる列車が一般車両とすんでの所で激突をかわす描写が地下鉄中央情報処理センターのパネルモニターで描写しているところ。(架空の領空侵犯飛行機撃墜劇を管制室でのモニターで演出するところに非常に良く似ていて大笑いした)
◇モニターから「クモ」が消えた時点でどうせ一般に公表されていない過去の路線にはいったんでしょ?と思ったら過去ではないにしろそうだった。まあ確かにあの幻の『新橋』駅というのは魅力的な設定だけど。
◇自動操縦装置が誤作動を起こすプログラムを、設置する際にあらかじめシステムに潜ませておくところ
◇ブラックカエル急便の後をカラスが追い、周囲のテレビモニターが揺らぐところが2の飛行船のオマージュと思われ。
これはこの車から電波が出ている、と言うことを描写したかったのだと思うのですが…「クモ」は携帯電話の周波を利用しているので無線周波数とは考えられないのですが。335.2がボレロの楽譜名ということで結局は無線周波を使っていたのだろうか?
…の割には最終的に車が爆発してしまうので実は無人で走っていたといことなのでしょうか?それとも最後にコンサート会場からでた時点でカラスが飛び去るのでこの時点で電波は発されておらず、犯人は逃走した遠隔操縦で走っていたと言うことか?
◇爆発のトリガーが、特定の音だということ。私はこれだけで充分だと思うんですがクライマックスでどうしても「クモ」を急停止させる迫力あるシーンが撮りたいもんだから、無理無理新宿までクモを走らせなくてはいけないところが苦しいよなあ…。
他にも沢山有ったような気がしたけど忘れた。
■私の推理する犯人と「容疑者室井慎次」について■
犯人が実は死んでいた!というところもパト1と同じです。
これどうやって収集するつもりなのでしょう?死んだと言っても犯人として実在の「手」が描写されていたし、真下と交渉しているからには実行犯は実在します。
それで私なりの推理をしてみました。
最終的にプロファイルした犯人像にヒットした人物が二人いました。そのうちの一人勤めていた会社名から羽田裕一を弾丸ライナーと断定したわけです。
私はそのままスルーされた名前を忘れましたが「なんとか商事」勤務の人が実行犯なのではないかと考えます。そうでなかったら(物語として)わざわざ二人ヒットさせる必要性がありません。
おなじシステムを構築するもの同志、会社が違っていても知り合いになる可能性は充分あると思いますし、意気投合することもあるはずです。
事故死した羽田裕一が仕掛けたスリーピングボムの存在を知っている「犯人」がそれを利用して今回の事件を起こしたということです。
この作中では「犯人」の人物像は明かされずに終わっていますがこれは8月の「容疑者 室井慎次」にシフトする問題と仮定します。
羽田裕一がシステム構築当時24歳。真下曰く「結構いっている」ということを強調している点が気になります。調べてみたのですが室井さんの年齢は34歳。羽田裕一も生きていれば同じ年齢とことになります。
実は学生時代の室井慎次の「友人」が現在の警察機構に有り方に不満をもち、直属の部下でありメディアに過剰に露出している「交渉人」真下にターゲットを向けた、という図式も成り立ちます。
現在のところ「容疑者」で彼が逮捕される理由は明らかにされていませんが、単なる捜査ミスで捕縛されるとは考えにくく、過去の「友人」がこの未曾有の事件の主犯格であり室井さんが警察の情報を流したと疑われ拘留された…というのは如何でしょうか?
彼のプライベートが明かされるという情報もありこの線は濃厚だと勝手に判断しています。
釈放されて自宅に帰ると留守電が入っており指定の場所に行くと「友人」が…なーんて展開だったら私は映画館で一人笑い死にます。
そしてレインボーブリッジから犯人「ここから観るとあの街はまるで蜃気楼のようだ」室井「貴方には幻でもあの街にはそれを現実のものとして生きている人たちが沢山いる。それとも貴方にはその人たちも幻だと?」
…なーんていったら私は心ときめいちゃうなあ。
いやもう私「劇場版パトレイバー」大好きなので。
…結局「機動警察パトレイバー」と言う名の押井守を褒めちぎって終り(笑)