コラテラル(こらてらる)

キャッチコピー:
その夜は いつものように 始まった

ストーリー

夜の大都会ロサンゼルス。タクシードライバーのマックスは、空港でクールないでたちのビジネスマンを拾う。男はヴィンセントと名乗り、多額のチップと引き替えに、マックスに一晩の専属運転手を依頼する。最初の目的地で事件は起こった。ヴィンセントが建物に消えて数分後、マックスの頭上に死体が降ってきたのだ。驚きに言葉を失うマックス。車に戻ったヴィンセントは、自分が組織に雇われた殺し屋であることを明かし、死体をトランクに詰んで次のターゲットの元に向かうよう命じる。2人の長く危険な夜がはじまった…。

コメント(予告編)

トム・クルーズが初の悪役を演じると言うことで注目を集めているこの作品。そもそも「初の」と言われている時点で今までの役のセレクトぶりが伺えますね。彼って本当にハリウッド俳優さんだなと思います。彼の演じるキャラを観るのではなく、キャラを演じる彼を観に行く感じ。映画をショージビネスと考えるならば彼ほどの俳優はいないと思う。それ程大きな当たり外れも無いし。
予告編観ましたが…うーんやっぱりトムさんはトムさん。「凶悪な殺人者」な印象がないなあ…。

レビュー

お薦め度:★★☆
「・・・・・・・・・いつもと変わらないじゃん。やっぱり「スター」トムクルーズじゃん。」と思いました。
「スター」トムクルーズファンなら観ましょう。ミステリー要素(展開の意外性)を楽しむ人にはお勧めしません。

私にはこの映画ならでは、と言う特徴・魅力が無いように感じました。
ですから見所は「スター」トムクルーズです。その他は美しいロスの夜景は好きな人には良いかもしれませんが、ストーリー的には何もなく、トムクルーズのトムクルーズによるトムファンの為の作品です。

「今度のトムクルーズはいつもと違う」と盛んに言われていて、「確かに悪役なんて従来のトムさんのキャラにはなかった。どれ位いつもと違うのか観てみよう」という気持ちで行きました。

いつもなら主演かつ主役なトムクルーズ、今回は主演であって主役ではありません。ここに注意しなくてはいけませんでした。またしても企業広告にだまされました。(そりゃあ確かに一番人気の高いトムクルーズを推してcmすることは間違いじゃないのですが…)

■タクシー運転手マックス(ジェイミー・フォックス)
本来は彼が主人公なのです。彼は彼なりにいい演技をしています。マックスとヴィンセントのやりとりこそがこの映画の要で、二人の比重が等分であればいいのですが相手が悪かった。悪い意味で「スターのオーラ」全開ですし、cmでもそのように宣伝されています。観客はクールで決断力のあるヴィンセントに目がいってしまい、人がいいだけのマックスはどうしても影が薄れがちです。

彼はこの作品の中でダメ人間というカテゴリに分類されますが。ダメ描写が今ひとつ。描写は現実的ですがそこから垣間見えるダメ度が低い。ある意味凡庸に日々を過ごしているだけであって積極的に(無意識に)自分の夢を食いつぶしている印象がありません。(私にとって「モンスター」の後というのがこの作品的に一寸気の毒だったか…)

■敏腕女性検事アニー(ジェイダ・ピンケット=スミス)
最初は彼女とマックスとのやりとりはマックスの性格描写(無駄にお金をぼったくらない実直な性格。ドライバーとしてのキャリアも実績も長い)なのかと思っていたのですが…。

彼女がタクシーを降りるシーンがめっぽう長い。しかもマックスは一日数回の現実逃避のための大切な写真をあげてします。後半でこの人を登場させます(その為にも彼女の性格も描写しています)と明らかに宣言されてしまいました。直後に乗せた乗客が暗殺者をだという本ストーリーが始まった時点で、「あーさっきの女性をめぐってドタバタするんでしょうね…」と展開が読めてしまいます。

別に読めてもいいんですけど(「テイキング・ライブス」などは読めたからこそ楽しめた)、もう一寸違う結論かも?と思わせる要素が欲しかった。その為にも上記のシーンはもう一寸簡潔にシンプルにして欲しかったし、最悪【写真を上げるなんてこと】はして欲しくありませんでした。(別にラストに重要でもないですし)読めてしまったからにはミステリー要素を楽しむことは不可能です。そこから他に熱狂する要素を見つけることが出来ませんでした。

■冷徹な殺し屋ヴィンセント(トム・クルーズ)
冷酷な殺人犯という設定にではありますが、冷徹にはなりきれていない印象がありました。これはもう「スター」トムクルーズという「俳優のイメージ」が私の中についているのが敗因かもしれません。

冷徹という性格表現が単純に「あっさりと人を殺す」というただ一点にのみ表現されている気がしました。
では内面のエモーション(感情)の表現はといえば【マックスの母親が見舞いに来いといったら仕事をすっぽかして病院に行きます】。ここの【母親に贈る花】などは別に【マックスが母親を蔑ろにしているから買わないわけじゃない。母親が花に興味がないから買わないだけで、】ヴィンセントのいい人振りとマックスのダメ人間振りを表現しているようでそうではない中途半端なエピソード。
人情をちらりではなく、あけすけに見せてしまう。(結局こういうところがトムクルーズなのか)ひとつの負のイメージを払拭するために、たくさんの大きな正のイメージを積み重ねられてしまうために冷徹なイメージをもてませんでした。

ストーリーの転機で彼はマックスを愚弄しますが、言いたいことをセリフで説明(補填ではない。ストーリーでの描写がないから)している感が強く萎えました。粗筋等を読むと二人が互いに人生に影響を及ぼしたと書いてありますが、私にはマックスがヴィンセントの行動力や決断力といった生き方を示唆されただけで、ヴィンセントがマックスの生き方に共感を覚えたと言う印象がありません。

ラストはヴィンセントが序盤で「【ロスでは地下鉄で人が死んでも六時間気付かれることがない】」というセリフに(最後に彼自身が言ってしまう位)明らかにかけています。
しかし、いくら無感動な都会でも、【銃を乱射されて血まみれの人が死んでいて六時間放置されること】はありえません。仮にこのセリフにかけたいのだったら【(気が付かれないように)綺麗に死んで欲しい】。そして本当に【人が通っても気が付いてもらえない】という描写をして欲しかった。

■褒める人のご意見
というのは師匠なんですが、彼女は「普通に良かった」そうです。
ではどこかというと、「ロサンゼルスの夜景が美しい」。曰く、この作品はほぼ全編にわたって夜で、基本的には闇の描写がほとんどです。ロサンゼルスをこのように描写した作品は今までになく綺麗な絵は楽しめたそうです。

■「スター」トムクルーズ
この作品はトムクルーズのプロモーション映画だと思います。基本的に彼のやっていることは違いはなく、ほんのちょっとだけ切り口が変わっただけです。彼にはこんな演技も出来ますよ、ではなく彼の演技で出来る悪役はこうです、という感じ。

ヴィンセントが彼じゃなかったら一体どんな作品になったのでしょうか?一寸脳内でシュミレーションしてみました。……見所がないどころか立腹してしまう作品になってしまいました。人に素顔を晒せないようなろくでもない仕事(殺し屋)の男が、それなりに地道に生活を送っている男性を翻弄し、馬鹿にする話…。

そう考えると、ろくでもないキャラをそれなりに魅力のある人物に魅せる彼のスター性はすごいのかもしれません。彼はこの点において文句のつけようがなく、「彼のかっこよさ」を求めて観る人を外すことはありません。どんな脚本であっても「彼のかっこよさ」を消すことは無いと思います。あるいは彼自身がそのような作品を選んでいるとも。

脚本が平凡であればあるほど、彼の存在が際立つことが証明された、彼の看板だけに支えられた作品。
今回はそんな映画だったと言えます。

…でも私はそこに熱狂できなかったので…ごめんよトムさん。

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