アイ、ロボット(あいろぼっと)

キャッチコピー:
ルールは破られた、未来は守れるか。

ストーリー

今からわずか30年後の近未来、家庭用ロボットが人間のパートナーとして普及している時代。そしてさらに、革新的な技術による新世代ロボットが登場し、新たなロボット社会の夜明けを迎えようとする直前、そのロボットの生みの親であり、ロボット工学の第一人者、アルフレッド・ラニング博士の殺人事件が起きる。容疑者は最新のns−5型ロボットのサニー。“ロボット3原則”により、絶対に人間に危害を加えられないはずのロボットが犯人なのか? その謎を追及するシカゴ市警の刑事デル・スプーナーとロボット心理学者スーザン・カルヴィン博士は、やがて、人類の存亡がかかった驚愕の真相に迫っていく……。

コメント(予告編)

なんだーウィル・スミスがロボットじゃないのか…ちょっとガッカリよ。話のスタートがちょい「イノセンス」とかぶっちゃってますねえ。お手並み拝見といったところ。全世界版サイトが結構おもしろかったです。自分の好きな配色のロボット壁紙が作れるんです。

レビュー

お薦め度:★★★☆
大作映画としてなら大成功です。結構楽しく観ることが出来ました。 微妙にネタが「イノセンス」、要素が「ghost in the shell 攻殻機動隊」、ラストの展開が「パトレイバー1」とかぶり気味ですけれどね…。…全部足して何倍かに薄めたと言ったらいいのかな?

■sfって退廃的か無機質かどちらかに傾倒すると思いますが、これはロボットの話だけに無機質な感じ。やっぱり造り物感は否めませんが、いい感じに出来上がっています。 アクションも車・銃・格闘となんでもござれ。cg技術も素晴らしいです。ロボット『ns−5』もとても動きが滑らかですし、ロボットだと思えば多少ぎこちなくても納得できますし。

■おそらくアシモフを期待するsfファンならぶち切れると思いますが(笑)大作にしてはそこそこ小理屈こねています。美しいビジュアル・激しいアクションシーンに付随したストーリーというのならば及第点を出してもいいです。

展開は破綻はないものの非常に強引です。ヘンゼルとグレーテルの絵本から「パン屑を辿るようにヒントを追う」ことを連想させて、スプーナー刑事を真相に導くというのは正直ありえないと思う。そこまで博士が意図的に仕組める?ヘンゼルとグレーテルといったらお菓子の家に行ってしまいそうです。だってスプーナー甘いもの好きだし。

ロボット三原則に対しては、激しく突っ込みを入れたい。何故、『ns−5』が三原則を破るような行動が出来るのか?と追求していくようなそぶりを見せるので、どう処理するかを期待したら「三原則を破っても行動できるようにプログラムされている」ではアシモフファンは納得しない。というか私もしない。では、ラストでの言及はどうだったかと言うと…まあ定番と言えば定番。

字幕では「幽霊」と訳されていた「ゴースト」の講義には…失笑。まんま「ghost in the shell 攻殻機動隊」ですがな。あれは…入れるべきだったのでしょうか。「ロボットが夢を観る」という解説のためには少々スケールが大きな議題のような気が。

…こんなにけなすものの、刑事のロボット嫌いをそれなりに言及して博士との繋がりを説明したり、半分義体ということで豪快なアクションに説得性を持たせた点には好感が持てました。

脳天やられる様な理屈や頭をフル稼働させる様な情報量などを期待せず、頭を休める「ハリウッド大作アクション映画」というつもりで見に行けば楽しめると思います。


■追記
sfを愛する師匠を上手く誘導して見て貰った所、案の定カンカンにお怒りでした(大笑)あんまり笑えたので(いや本人笑い事で無いくらいお怒りだったが)掲載許可もらったのでupします。

さて「アイ、ロボット」の何がいかんのかというと。 まず世界観がなってない。2035年のシカゴという設定なのに、2004年の町並みとどう差があるというのか。昔の建物をそのまま使っていると言う設定ならそれも良しとしますが、(現代のヨーロッパが18世紀の建物にそのまま住んでいるように)それならばなぜ人が今と全く同じファッション?
たかだか5年で髪型さえ変わるって言うのに!sf映画でこれって、現代ドラマで登場人物がカツラにコルセットつけてるような感覚です。まずこの時点で時代考証がなってない。

新型のns5が一般家庭に普及していくのもおかしい。万能家電として使われているようですが、じゃあなんで警察で使ってないの?命に関わるような危険任務にハイテクロボットが導入されてないのに、一般家庭に先に普及するなんて変だろう。

ロウパワーユニットのロボットならわかるが、あの大暴れぶりなのに3k仕事に使わないなんて納得いかん。で使うのが「おつかい」程度?ふざけるな。そんなもったいないこと誰がするか。人間と同じ動作でき、それ以上の能力を持つロボットが開発されたら、3k職場から普及してくんだよ!

あとロボティクス社にやたら人間の職員がいるのもおかしい。 職員は全部ロボットにしないと。企業としては格好の自社アピールの場です。率先して使うのが当たり前。だと言うのに警備員ですら人間とはどういうこった。危険任務からロボットが導入されるといっておろうが。

警察内部の描写もおかしい。まず部屋の内部にパイプむき出しの意味がわかんない。機械的な描写狙ってんのか?だとしたら発想が貧困だ。モニターがあってそれが平面画像なのも納得いかん。家庭用ロボットの開発より3dテレビの方が優先されるだろう。せめて街中のモニターくらい3dにして欲しい。

死んだ博士のメッセージでやれるなら、企業はcmでやるんだよ!あと書類が紙なのもおかしいんだっつの。今でさえペーパーレスが叫ばれているんだから、電子文庫みたいな形体で持ち歩くのが普通になるでしょう。外部に事件ファイル持ち出すのもおかしい。車の中でロボティクス社にアクセスしているように警察コンピュータに直でアクセスが義務付けられるはずだろう。

スプーナーがバイクを見せた時の博士の反応も納得いかない。
「燃料がガソリン?爆発するんじゃないの?!」と言う反応でsfっぽさを出そうとしてるのかもしれませんが、それならば「タイヤがゴム?走れっこないわ!」の反応の方がありえそうだと思う。

まず前述のセリフでガソリンが燃料として使われていないことがわかります。ということはガソリンは一般的でなく、「燃料=ガソリン」という発想よりも先に今のスタイルとは見た目ですぐ違うとわかる「タイヤ」の方に先に反応が行く方が自然です。(車にはタイヤが使われてなかったし、ロボティクス社のトレーラーにはタイヤがあったがゴムではなかった)ましてやゴム製です。こっちに不安がる方がsfっぽさが出ると思う。 ガソリンなんて実際爆発するし。私達が不安がらないところで不安がる方が時代の違いがくっきりするんだよ。

ロボティクス社の内部が蛍光灯使用なのもいやだ。しかもむき出し。無機質な雰囲気出したいからってそれはねえ・・・。建物内部は蛍光灯色の光で照らし出され、かつ光源がどこにあるのかわからないくらいの描写ができんのか。

スプーナーが引ったくりと勘違いしたロボットの主人が喘息と言うのも納得いかん。何でスプーナーの義手があんな高性能だというのに、お金持ちそうな服着たマダムが喘息なんだ!
人工心肺やら気管支やらが開発されているに決まっておろうが。金持ちならロボット買うよりそっちから取り替えるだろう。宗教的な理由でそれ出来ないと言う可能性もありますが、それなら劇中でそれを示唆するセリフを入れるべき。出来ないならそんな演出するな。いっそもう単純に「サイフ忘れた」とかにしてくれた方がまだマシ。

あと三原則の問題。
スプーナーがラニング博士のメッセージに従って行った場所で、ns−5に襲撃されるシーンがあります。窮地のスプーナーを救うのはその場に集められていた、廃棄処分の旧型ロボットたち。彼らは刷り込まれた三原則の1条に従い、「人間を守れ!人間を守れ!」と叫びながらns−5を攻撃します。
圧倒的なパワーの差で、次々に破壊されていく旧型のロボットたち。そのうちの一台がその場から逃げ去ろうと疾走しているスプーナーの足にすがり、「助けて」と言うシーンで猛烈に脳が煮えた。

ロボットにおいては第一条が二条と三条に優先されるんだよ!自分が壊れようが、危険から逃げるスプーナーの足をわずかでも止めさせる可能性など絶対に有り得ない、これが三原則の遵守なんだっつの。

チラシにスタッフのコメントとしてこんなようなことが書いてあった。
「アシモフはロボットが三原則に従いながら、人間達の意図に沿わない状況をいくつも作って見せた。この映画ではその新しいパターンを作り出せたと思う」
いや作れてないから。三原則も破りまくってるから。

「きっとアシモフ本人も誇りに思ってくれると思うよ」
多分おもわないね。

とにかくsf映画としてはあまりにもひどい!悔し涙が出ちゃう。唯一良かったのはスプーナーの家で、カルヴィン博士が旧式のオーディオシステムに向かって音声で支持を出すところ。リモコン操作なのにずーっと機械に向かってしゃべるところがよかった。
あとはいかん。スタッフは我々にお詫びしなさい。
sfファンに一回、アシモフファンに一回。義務です。よろしく。

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