ピーター・パン(ぴーたーぱん)

キャッチコピー:
ボクを残して、キミは大人になる。

ストーリー

13歳の少女ウェンディーはある夜、不思議な物音で目を覚ます。
そこで見たものは自分の影法師を格闘する少年、ピーターパン。
影法師を縫い付けてあげたウェンディーにピーターは海賊を妖精の住む国ネバーランドにゆこうと誘いかける…

コメント(予告編)

きっと誰でも名前ぐらいは知っている作品ですね。
予告編ではフック船長が妙にかっこいいので「ちょっと変だよね」と友人に言ったところ、ディ○ニーのアニメでオッサンに描かれていたためそれが浸透してるけど、原作ではフック船長は元貴族のインテリで割合若い設定なんだとか。うーんディ○ニーに洗脳されていたとは…不覚。そのあと延々語りが…貴女そんなにピーターパン好きとは知らなかったですよ。
絵的に綺麗そうなので見てもいいかな。

レビュー

お薦め度:★★★★★
ごめんなさい(誰に謝っているんだか)、私フック船長目当てで行きました!
素敵!ブラボー。一寸期待過多かと思っていたのですがそれ以上でした。万歳万歳。

…と冷静でないコメントはここまでとして。
原作ファンの友人と行きました。コメントで私に説教と語りをしてくれた人です。
昔ミュージカルが余りに子供向け過ぎで鼻白んでしまったので、あんな子供騙しだったら嫌だなあと思っていました。ところがところが、非常にキュートでいい意味で作り物っぽく、舞台では不可能な表現を上手く映像にして、小さな笑いをあちこちに散りばめていて大人でも充分に楽しめる作品に仕上がっていました。

世間様で大人気のサンプラー君もなかなか可愛かったです。私が想像していたピーターは10歳前後だったのでそれよりはやや高め。ウェンディーよりもかなり背が高くて一寸ビックリしました。

この作品撮影するのに大分時間がかかったそうで(メインが子供だからね…学校の都合?)中盤からどんどん大きくなってしまいました。ピーター成長しないのに(笑)。ウエンディーとのダンスシーンのシルエットはすっかり青年の横顔…子供の成長って早い。
インタビューで「この役は今このときしか出来ないから」、と本人コメントしていましたがまったくその通りです。いくらCGが発達してもいくら演技力の優れた俳優がいたとしても、永遠の少年は相当の少年がやらないと。

ウエンディーのやんちゃ振りとおませな感じが良かったです。原作よりかなりやんちゃです。「私が血染めのジルよ!」とか言っちゃう所はかわいい。

そして期待のフック船長ですが、いやこれがもう(笑)普通に登場して、普通にかっこよく、普通に乱暴ものかと思いきや、しょっぱなから、半裸で寝てるし(原作の「この下で海賊が一人眠っている」という台詞を受けているんだと思う)第一声が「夢の中でワシは寛大だった」とか言うし…わーこの人イカレ(イカレ大好き)。
この作品一番の衣装持ち。いよいよ大締めの戦いの前にはきちんとおめかしして、フックもちゃんと選ぶのだ。片耳にイヤリング、ブーツには髑髏のマーク。カフスも髑髏。
原作の「ハープシコート奏者としてはなかなかのもの」という記述だけで実際にハープシコートを演奏するシーンが盛り込まれたり、「ジェームズとジャスと記述します」ってだけで部屋の名札が「ジャス・フック・ルーム」だったり、パイプはちゃんと二股だし。細かいねえ…
当然横暴だから「何か意見は?」とか一応言うけど聞いちゃいないし。
ワニに食われそうな時は世にも情けない声で助けを呼ぶし。
空を飛ぶとき、この人の楽しいことって一体なんだろう?と思ったらラストでそれが分かった時は大うけしました。「八つ裂き、貼り付け、親不知、子供の血、子猫の血」ですか…しかもさり気無くいたって普通の「温かい紅茶」があるのにさらに大うけ。流石、英国紳士。

フック船長とウエンディー達のおとうさんの両方を演じるジェイソン・アイザックスは雑誌のコメントなどを聞くとかなりのご苦労が有ったようで、「剣術はそこそこ自信があったので、サンプターに教えることが出来るぞ、と自信満々だったのに監督に『分かってる?君は剣を左手で持つんだよ』といわれた」とか、全てセット撮影のこの作品、空調はほぼ半裸のピーターにあわせてあるので、「汗だくのフック船長の前で皆、暖かい紅茶を飲んでたよ」(サンプター談)…かわいそー(笑)

ストーリーは原作ではサラリとかかれている小さな記述も上記のように大事にしっかり再現しているところが素晴しい。

しかもオリジナルで挿入されるシーンもイメージ壊さずとても自然。
クマのぬいぐるみを使った小ネタが結構笑えました。
「鷲の魂をよんで、戦士の傷を癒す」シーンはとってもマッチしていて、原作に出てこないなんて不思議って思いました。タイガーリリーはもう一寸出ても良かったけど。でもこれが限界かな。

財宝を持って帰ってお父さんに見せるシーンは、握手の値段さえ知っているおとうさんが一気に子供が増えてお金の心配をしないはずがない、という疑問を上手く払拭してます。

個人的にはスミーがミシンを踏むシーンとか、哀れにみえるスミーを見て図らずも涙腺を刺激されてしまったフック船長のエピソード、反省したおとうさんが犬小屋で寝るシーンを入れて欲しかったな。

原作をきちんと踏まえていますが、原作者がちょっと触れてはそのまま流していることを上手く拾って膨らませています。
サンプラー君が一寸年齢が高めのこともあって、ピーターの単に大人になりたくない「だだこね」が「恐れ」のように表現されていました。この作品「究極のおままごと」なんですよね。ピーターが「おとうさん」でウエンディーが「おかあさん」。ごっこのうちは楽しいけれどこれがつくりごとじゃなくなってしまうことを極端に恐れるピーター。
大人になれないのではなく、心の成長を拒否することによって大人にならない。終盤で原作のエピローグにあるウエンディーが大人になってからことをフック船長に指摘され、ピーターが狼狽するくだりは原作の本質わかってなと思いました。

原作を知らない私も大満足、原作ファンの友人も大満足のなかなか良い作品でした。
ファンを納得させるのって結構難しいものですよ。

友人が大ヒット御礼のため、お付き合いで吹替え版も観に行きました。
文字制限の都合上、省略されていた部分がちゃんと原作どおりのくだりだったりするのは嬉しいことです。
配役はピーターが一寸年齢高めになってしまったのは残念ですが、ウエンディや弟達、フック船長や海賊達はイメージに有ってて良かったです。オリジナルキャラ?のオウムが字幕だと余り言葉が出てこないのですけれど、吹替えではしっかり喋っていました。可愛い(笑)
ハープシコートを演奏しながら自作の海賊の歌を歌うフック船長は必聴。ばっちりです。
片方がフックでどうやって演奏しているかということは聞いてはいけない。
見せ場の「I believe a fairy. I do. I do.」「妖精を信じる!そうとも、ホントに!」はもう一寸流れよく表現してほしかったなあ…。

ところで、この作品をご覧になった方がいらっしゃればお聞きしたいのですが、字幕でピーターがウエンディーの家の様子を見に行って窓を閉めるシーン「彼女は一人しかいない」でしたか?友人が再度観に行った館ではここが「彼女を自由にさせて」だったと主張しているのですが…曰く字幕が二通りあると。私が観たときは確かに前者だったのは覚えているのですが。

ちなみにこの作品の私達の流行言葉。
3時になると「ピーターが帰ってくる!」と言う。
「刀、短剣、ナポレオン!」といってジャンプする。
どんぐりを持って「キスはパワフルだ」とか言ってみる。
「体が小さいからひとつの感情しか入らないの」とか「夢のなかで私は寛大だった」とか言ってみる。

■原作
子供向けと馬鹿にせず(私はしてました。ごめんなさい)一読することをお薦めします。ディズニー文庫や子供向けじゃないヤツね。私が実際に読んだ本を関連商品にあげておきます。これは子供向けの英文を訳したものではなく原書をかなり忠実に翻訳してあるのでお薦めですよ。図書館などで是非。

この作品が、幸せ一杯の夢の御伽話だけではないことが良く分かります。
ピーターの子供っぽさは実際のところ結構残酷です…他人のことに気を配らず、夢と現実の区別が付かず、物事に執着が無く、非常に忘れっぽい。
『ロストボーイは大きくなりそうだと、規則違反なのでピーターに間引かれてしまいます』なんて読んだときには卒倒するかと思いました。

原作を読んでから映画を観ると、つくづく原作を愛して、よく読みこんで作ってあることに改めて感心しました。
あれは「ピーターパン症候群」や「永遠の少年」「恋や愛について」のひとつの回答が含まれていると思う。
恋を知るって、大人になることで嫌なことも我慢しなくてはいけない。
ピーターは大人になることが嫌だから「恋をすること」を拒否して、得られる幸せを取ったのだけれどそのことで得られない幸せもあるのですよ、そういいたいのだと感じました。

■DVD特典映像について
「もう一つのED」
原作にあるウェンディが大人になってからのエピソード。本編同様、実に丁寧なつくりになっています。ウエンディが大人になったことを知った時のピーターパンの狼狽ぶりが一寸切ない気持ちに。しかし何せおまけ映像ゆえに、加工処理がいい加減でワイヤー見えまくりですさまじく夢壊れたことにも涙しました。というか、自分の驚愕ぶりに「自分そこまで夢見てたのか!」とそこにも驚いた。トホホ…
「犬小屋のダーリング氏」
原作読んで入れてほしかったエピソードがあったことに感動。すごいので!本当に!!一見の価値あります。本当にお父さん犬小屋に住んでるし、そのまま仕事に行くし…このスタッフここまでド本気だったのね。感動した。
「ドキュメンタリー」
これもなかなか良かったです。空を飛ぶのって結構大変なのね。「幻の海賊ソング」なども披露してくれます。もったいないつかってくれればいいのに。可愛いから。

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