ビッグ・フィッシュ(びっぐふぃっしゅ)

キャッチコピー:
そして、幸せだけが残っていった。

ストーリー

いつも御伽話を語ることで人気者だったエドワードを息子のウィルはどうしても好きになることが出来なかった。
しかし病床に就いた父を訪問した息子は次第に和解するようになる…

コメント(予告編)

いかにもティムバートンらしい作品の匂いを感じます(笑)
監督を知らなかった時から気になっていたので観に行くつもりです。

レビュー

お薦め度:★★★★★
「うわ〜ん、ティム・バートン、私を泣かすな〜。」というお話でした。

ストーリーは簡潔です。
父親の話す物語は本当に御伽話のようで最初はなんでもかんでも空想話のように描かれているのに、徐々にまるっきり嘘ではなかったと明かされていくに従って父親に反発していた息子が徐々に歩み寄っていく過程が実にさり気無く描かれています。

この御伽話の映像がとても、ティム・バートンらしいです。
一寸古いような懐かしいような風景・淡い色調の服・何だか良く判らないけど大げさな機械(急激に成長したときに使っていた多分筋肉を伸ばす機械とか、卵割る機械とか、万能ハンドとか…もう観た瞬間「来た来た〜!ティム・バートン!素敵〜」とか心の中で叫んでしまった)・独特の音楽・渦を巻いた樹木・グレーがかった霧・不思議な容姿を持った人々(これに出てくる中国のへんてこぶりには腰が抜けるかと思った)…
なんかもう何処までが原作通りでどこまでが監督の味付けなんだか判らないくらいこの監督らしいんです。

ビッグ・フィシュというこの作品のタイトルも「ほら吹き」と「息子の生まれた日に釣った魚」「ビッグ・フィッシュ(大物)にならなくちゃいけない」「実は【彼の本当の姿はビック・フィッシュだった】」などいろんな点に関係しているというのが素敵。
息子の奥さんが、父親に「あなたの話には大きな尾ひれが付いている」っていうシーンがあるのですが、作品タイトルと「大げさに話を語る」という二点を実に上手く表現されていてうっとりしましたよ。

ラストは涙が出ますけれど、とっても清清しく泣けます。
キャッチコピーに「その大切さに気づいたのは、最期のときだった。」というのが有りますけど、確かに最期だったけど遅くはなかった。気が付いたということは本当に幸せなことだと思いました。
こんな幸せな死に方をしたいなあ。味気の無い現実よりも、こんな幸せな御伽話に見送られてこの世界とお別れできたら本当に幸せだなあ。
朧な姿しか現わさない水の妖精が最後に【奥さんの姿で微笑みながら夫を見送っていくシーン】は本当に涙が出ました。


■監督ティム・バートン■

上記の「監督らしい点」で特にこれだけは特記したかったものがあります。
一般世間から離れた夢のような世界でありながら時々ちらりと覗く現実。

スペクターという村に本当に可愛らしい女の子(また何処から探してくるのかこんな子役を…)が登場するのですが、後半になって【スペクターが実際にあった村だったことが判り、彼女が大人になり、人生の辛い現実に直面している】ところが切なかった。
彼女は彼女なりに主人公をひたむきに想っていた(最初、彼女が奥さんになるのかと思った)のだからもう一寸幸せなその後があっても良かったのに】、って。
スペクターがまるで夢の中にあるような綺麗な理想郷の様に描かれているから。【彼の空想だというのなら女の子は永遠に八歳のまま生きていただろうし、現実であったとしてもきっと幸せに暮らしていたと想像させるようなお話だったから。

ティム・バートンの女性観って厳しいなあ。
ヒロインは飽くまで可憐で純情だけど、それ以外の女性はおばさん根性丸出しだったり、酷く現実に則していたりするんですよね。

「あの人の頭で考えなくっちゃ駄目よ。あの人にとっては女性は二通りしかないの。『愛する奥さん』と『それ以外』よ」…厳しい。これを『それ以外』の少女本人の口から言わせてしまうところが、この監督らしさ。
スペクターが、近代化の波に流されて荒廃し、父親の尽力でなんとか元に戻ったものの、又元の廃墟に戻ってしまった。というところも、監督らしい。

ティム・バートンらしさは炸裂していますが、いつもと違うなあと思った点は、
いつもは「完璧な閉じた世界」(他に想像の余地の無い、その映画だけの世界観で世界が回っているような感覚に陥る作風ってこと)を構築する監督ですが、今回はいい意味で「閉じた世界」ではありません。
今まではちょっとへんてこな世界を「現実」の世界として描いていたわけですが、今回はそのへんてこな世界が「空想」だと銘打って描かれている訳です。その辺が功を奏してへんてこ加減が炸裂しているんですね。
閉じていないから、閉じた世界よりもより世界観が強くなってるってというのはいいえて妙な感じです。

この作品「ティム・バートン最高傑作!」と銘打たれていますけど、確かに今まで作られた作品のいいところをバランスよく表現された作品だと思います。
(ヴィジュアル的に最高なのは「スリーピー・ホロウ」、キャラクター的に最高なのは「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」だと思っています。)

日本サイトでは黄色いお花畑が強調されていますが、海外だともっとティム・バートン臭いサイトです(どんなだ)。序盤の御伽話シーンの絵コンテや構成がかなり丁寧に説明されている(読めんけど)コーナーやモチーフのイラストボードなどが沢山掲載されていますので、作品を観た後見ると結構楽しめると思います。

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