予告編大嘘付きです。ブエナ・ビスタ戦略間違ってますよ。予告編では幼い少年が人員不足の為に伝説の艦長こと「幸運のジャック」の指揮のもとで、過酷な海軍生活を送る、という話のように受け取れます。サイトのイントロダクションも同様です。
しかし蓋を開けてみれば「戦う天使」(またこのあおり文句もどうよ…)ブレイクニーことマックス・パーキス君はは言うほど出てきません。これはジャック・オーブリー艦長とスティーブン・マチュリン船医の友情物語じゃないですか。原作だって「オーブリー&マチュリン」シリーズ…。
ストーリー自体は淡々としていて、特に起伏がありません。この作品、終盤直前まで立ち向かうべき敵の姿は具体的に描かれておらず、終始船での生活に焦点が当てられています。およそ衛生的とは言えない環境・配給酒が数少ない楽しみ・官僚と下っ端の格差・急に襲い掛かる悪天候・人間関係の軋轢…かなりリアルな描き方です。この作品の一寸前にはまった作品でイギリス海軍に付いて一寸調べて回ったことがあったので、頭ではなんとなく理解して今しがた実際に映像として出されると本当に劣悪な環境なんですね。まさに、真の敵は己の内にあるといった感じ。
敵との激しい戦闘・戦略を期待していたのでその辺は一寸期待はずれでしたか。
ジャック・オーブリー艦長ことラッセル・クロウは…うーんビジュアル的にねえ、最初は少々きつかった。貫禄を付けるためなのかも知れないですが太ってるんだもん。(あー私なんでビシュアルなんかに拘ってるんだが)というより多分あの長髪が似合わないのがいけないんだと。後半は大分こなれてきてかっこいいなと思うシーンはいくつかありました。
ブレイクニーは予告編を観ると、兵隊が不足した為に徴兵されてきた幼い子供、といった印象を受けますが実際は父親が伯爵で仕官候補生として船に乗り込んだ少年です。なので、比較的いい待遇を受けていますのでそれほどの悲壮感はないですね。
前宣伝でまったく無視されてしまったスティーブン・マチュリン船医のポール・ベタニーですが…いかにもインテリっぽくていい感じ(笑)登場シーンは医者らしく痛いシーンをしょっぱなから演じていて眉間にしわが寄ってしまった。そして【自分で自分の腹を手術する】とは思わなかった…こんなことするのは【ブラックジャック先生】ぐらいのもんだと思っていましたよ。
さて、実際は「オーブリー&マチュリン」なこの作品。冒頭は単に艦長と船医という仕事上の関係ですが、この二人が実は長年の親友ということが徐々に判ってきます。そうすると単に有能な船医、粗暴な艦長という役から徐々に人間らしい一面が覗くようになります。
へたくそなバイオリンとチェロ(かな?)を二人で演奏しながら、作戦会議とも友人同士の企み?とも付かない会話を交わすシーンは微笑ましいです。
私が一番受けたのはガラパゴス諸島上陸のエピソード。
生物オタクなスティーブン船医、ガラパゴス諸島にしばし寄港するときいて珍しい動植物が収集できると心浮き浮き、しかし
追跡している海賊船の行き先が判ると船長は突如、寄港を中止。【スティーブン船医怒る!ジャック艦長と口論の末、彼の「道楽には付き合ってられん!」という一喝に……すねた(笑)
すねるなよーーいい大人が。ちょっと可愛かった】(笑)
それでもって【船尾でしょぼくれる船医さんをブレイクニーが慰めるシーンがまた一寸可愛らしくて笑える。
「先生、甲板で見つけた虫です」(と、ゾウムシ?を差し出す)
「…」(だまって受け取るスティーブン船医)
「こんなに島に近いんです。きっとガラパゴス諸島の虫ですよ」(なんとか慰めようと必死)
「…ありがとう。」】
この二人、趣味が一緒だからか精神年齢も一緒なんだか(きっと両方)この後も、一緒にガラパゴスで植物採集をしたりつるんでて可愛いです。
この作品一応アカデミーノミネート作品ですが、私にはそこまでの「何か」があるとはちょっと考えることが出来ませんでした。強いて言うのなら、表現することが難しいとされるこの時代背景や、外す確率が大きいと言われる「水物」映画をここまで上手く表現したことでしょうか。もしくは、読んでいませんが原作のイメージをかなり忠実に描かれているかということかな?
まあそれはさておき、原作が「オーブリー&マチュリン」シリーズ、という点を頭に入れて観に行けば割と楽しめると思います。