ミスティック・リバー(みすてぃっくりばー)

キャッチコピー:
もうひとつの「スタンド・バイ・ミー」を見るために、あなたは大人になった。

ストーリー

仲の良い少年三人組が路上で遊んでいると、警察と名乗る男性が現れ、少年の一人を連行するといって車に乗せそのまま行方不明となる。男性は誘拐犯だったのだ。数日後、誘拐犯から逃げ出してくるが彼は性的虐待をうけていた。/それから月日が流れ、それぞれが久しぶりに顔を負わせたのは殺人の「被害者の父親」として、事件を担当する「刑事」として、そして「容疑者」としてだった。

レビュー

お薦め度:★★★★
コピーは「あなたはもう一つの”スタンドバイミー”を目撃する。」うーん。スタンドバイミーをしらないからなあ。

少年時代仲良しだった三人組。あるときその中の一人が誘拐され数日間行方不明になる。数日後、誘拐犯から逃げ出してくるが彼は性的虐待をうけていた。
それから月日が流れ、それぞれが家庭を持つようになった。一人は若い頃に悪に身を沈めるものの更正し一人娘を持ち幸せな生活を送る。ひとりはそれなりに高学歴を修め刑事になるも、奥さんに逃げられて別居生活。一人は精神に傷を持ち低所得者。

それぞれが久しぶりに顔を負わせたのは殺人の「被害者の父親」として、事件を担当する「刑事」として、そして「容疑者」として。

私にとって、被害者の父親役/ショーン・ペンってアイアムサムの知的障害者のイメージしかなかったので、が脱いだらすごいので吃驚しました。
いたって温和そうな顔を見せているのに、いったん見境がなくなると悪知恵が回るような表情になるところや、犯人だと決め付けて復讐の刃を向けた相手が実はそうじゃなかったと刑事の友人から伝えられた時の何とも言えない表情等はやっぱり演技派だけのことはあります。

私は当初、この容疑者というのが結構重く扱われているのかと思ったんですがそうでもないです。
「容疑者」として作品上でも扱われるのは後半のわずかな所で、観客から見てこの人は実は犯人なのではないか?と疑惑を持たせるような演出をしています。
この人が子供時代に誘拐されて性的虐待を受けた子供なんですね。それが理由でおどおどしたような性格なのかは表現されていませんでした。
ただこの三人の中で一番最下層の生活を送っていたらしいと言うことは確かなようです。それ故に余計に容疑が強くなってしまう。そして過去に虐待を受けたからからこそ事件を起こしてしまい、またいらぬ疑いをかけられてしまう。

刑事役の人はこれでいいのかよ!と突っ込みを入れたい気分では有ります。 だって【被害者の父親が容疑者を殺したこと】はほぼ自明の事実なのに、それに目を瞑るってどういうこと?
それは犯人が子供時代からの友人だからなのか、自らも一瞬でも彼を疑ったという後悔からなのか。その辺が私には読めませんでした。この人だけが結果オーライなんですよね。

私は主役の三人の男性もさることながら、その妻の三者三様の事件の捉え方が印象に残りました。

被害者の父親は、娘を愛していたからこそ悪の道から抜けたものの、また愛していたが故に悪の道(殺人)をおかしてしまう。そしてそれを妻に吐露した時の夫婦のやり取り。夫が殺人を犯したことを受け入れ、許容し、それを父親がすべき正しいことをしたまでだと説得?する彼女は、それまでのショックを受け弱そうな印象はまったくありませんでした。

容疑者の奥さんはまったく逆で、夫が実は娘を殺したのではないかと真っ先に疑い、それをその父親に注進したのは自分で、その後夫は行方不明。そして、嘘なのではと疑っていた夫の証言を裏付ける証拠が発見される。
彼女はこの先一生、夫の言葉を信じず、そのせいで彼を死に追いやったことを悔やんで生きていくのでしょうかね。行方不明の夫が本当はどうなったのか、そして誰がそうしたのかをわかっていても。ラストのパレードでやつれきった表情で一人息子に一生懸命手を振る姿が切ないです…。

刑事の奥さんは、殆ど事件についての現状は知ることがありません。
冒頭で、別居中で電話はかけるものの、一言も言葉を話さない奥さんが事件に行き詰まって弱音を吐く刑事の言葉を聞いているうちに少しづづ心を開いていく様は上手く表現されていると思います。
そうして、自分の周りの幸せだけを守る事だけで精一杯で、他の事にまで手が回らない。だれもがそうして行動してしまったがためにこのような結果が生まれてしまった。 私にはそう思えてなりません。

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